【11月25日 AFP】ノルウェー国営電力会社スタットクラフト(Statkraft)は24日、世界初の浸透膜発電の実証プラントの運転を開始した。式典にはメッテ・マリット皇太子妃(Crown Princess Mette-Marit)も出席し、運転開始を祝った。

 実証プラントは、首都オスロ(Oslo)から南に約60キロのオスロ・フィヨルドの岸辺にある、かつての塩素工場に建設された。

 このプラントは浸透作用という自然現象を利用している。1枚の浸透膜(塩分は通さないが水は通す薄い膜)を隔てて淡水と海水が出会うと、淡水は海水の方に引き寄せられる。このとき海水側にかかる圧力でタービンを回転させて発電するという仕組みだ。浸透作用はこれまで海水の淡水化に利用されてきた。

 浸透膜発電には多くの利点がある。まず、風力や太陽光といったほかの再生可能エネルギーとは違い、天候に関係なく安定した発電ができる。また、淡水と海水があれば発電が可能なので、発電所は、川が海に流れこむところであればほぼどこへでも設置することができる。

 こうした技術には、米航空宇宙局(NASA)も宇宙ステーションでの利用を視野に入れて、強い関心を寄せている。

 今回稼働した実証プラントが当面発電できる電力はコーヒーメーカー1台を動かせるだけに過ぎないが、浸透エネルギーの世界全体の潜在量はEU加盟国の総エネルギー生産量の半分に相当する年間1700テラワット時にのぼると推定されている。実用化にはエネルギー効率の高い浸透膜の開発が不可欠だ。

 スタットクラフトは、発電容量が25メガワットで約1万世帯に電力を供給できる初の商用浸透膜発電所の建設を2015年にも始めたいとしている。(c)AFP/Pierre-Henry Deshayes

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