【10月25日 AFP】石油価格の変動や気候変動の影響を軽減できるのではないかという期待の中、あるものから燃料を得る方法が模索されている。そのあるものとは、藻だ。

 耕地ではない土地や濁った沼や池、排水でも培養できる藻は、再生可能エネルギーの有望な原料として研究が進みつつある。

 全米の大学の研究所や新興企業も研究に取り組んでいる。この夏には大企業として初めて米石油大手エクソンモービル(ExxonMobil)が、カリフォルニア(California)州のバイオテクノロジー企業と提携して6億ドル(約550億円)を投じて研究に取り組むと発表した。
  
 研究者たちは、研究が成果をあげれば沼などで増殖したから藻から脂質を抽出し、乗用車やトラック、ジェット機の燃料になるバイオ燃料を作る高効率の方法を確立できる可能性があると話す。

 フロリダ国際大学(Florida International University)のジョージ・フィリピディス(George Philippidis)氏(化学工学)は、藻を原料にしたバイオ燃料は数年以内に実用化されるとみている。

 すでにカリフォルニア(California)州の新興企業サファイア・エナジー(Sapphire Energy)は今年9月、藻から作った燃料とガソリンを混合した燃料でサンフランシスコ(San Francisco)からニューヨーク(New York)まで自動車を走らせる実験を成功させている。

 藻が二酸化炭素を吸収することも注目を集めている理由だ。「工場などが排出する二酸化炭素を培養する藻の『えさ』として活用し、大気への排出量を減らすこともできるはずです」(フィリピディス氏)

■コスト削減が焦点、燃料以外の活用法も

 しかし藻から安価な燃料を大量生産する方法は確立されていない。3年前から藻のエネルギー利用を研究しているミッドウエスト研究所(Midwest Research InstituteMRI)のロイ・スウィガー(Roy Swiger)氏(分子遺伝学)によると、藻から1ガロン(約3.8リットル)の燃料を作るのに現時点では100ドル(約9200円)かかっているという。
 
 いかに生産性を上げてコストを下げるか。これが現在の研究のポイントだ。藻から脂質を抽出するには藻を乾燥させる必要があるが、現在の技術では1ドル分の燃料をつくるのに乾燥機の電気代が5ドルかかっている。スウィガー氏は、うまくいけば5年後には1ガロンの製造コストを40ドル(約3600円)まで下げられるとみている。

 しかし専門家の多くは藻から作る燃料が完全に化石燃料を代替するとは考えていない。そもそも藻からバイオ燃料を得るというアイディアは数十年前からあったにもかかわらず、いまだに採算がとれる生産方法は確立されていない。

 藻の専門家ジョン・ベネマン(John Benemann)氏は「夢のような主張ばかりしていると、かえって藻の応用研究に不信感をもたれかねない」と懸念する。ベネマン氏は藻は家畜の飼料や化学薬品、肥料の良い原料になると考えている。

 上述のフィリピディス氏も実用化につながる確実な方法はないことを認めているが、生産量が増えればコストは急速に下がると考えている。「そうなればギリシャの小島でも買いたいですね」(フィリピディス氏)(c)AFP/Ruth Morris