【10月23日 AFP】米国の研究者らは、バイオ燃料の生産規則によって森林破壊が進み、バイオ燃料生産技術がかえって間違った温暖化削減手段になっていると警鐘を鳴らしている。

 23日の米科学誌「サイエンス(Science)」に掲載された論文で、13人の科学者グループは、こうした「抜け穴」をなくした新たな規則を作り、12月にデンマーク・コペンハーゲン(Copenhagen)で行われる気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で提唱することを求めている。

 論文は、米エネルギー省の統計も含む数々の分析が、「CO2の削減目標が高くなるなかで『抜け穴』を放置すると、世界の原生林の大半が失われていくことになる」可能性を示しているという。EUの排出権取引システムと、米議会が今年可決した気候変動法案も、同様の「抜け穴」を可能にするという。

 また、森を切り開いて作られることもあるバイオ燃料は、値段は安いかもしれないが、温室効果ガスの削減においては間違った方法だと強調している。 

 おりしも、世界自然保護基金(World Wide Fund for NatureWWF)は22日、世界の森は毎年1300万ヘクタール、サッカー競技場にすると毎分36個分のスピードで失われつつあるとする報告書を発表した。

 論文は、「森林破壊は、約20パーセントの温室効果ガスを生み出す。森林破壊をやめることが、世界を気候変動の危険から遠ざけるための最も費用効果が高い方法の1つであることは明らかだ」と指摘。さらに、COP15の参加国は、温暖化対策として提案されたテクノロジーを適切に評価することの重要性を認識すべきだとしている。

■森の開墾が温暖化を加速

 22日の米科学誌サイエンス電子版「Science Express」に掲載された別の論文には、バイオ燃料のための土地利用の変更が生み出すCO2を、気候会議に参加する主要国がいかに考慮していないかが指摘されている。

 ウッズホール海洋生物学研究所(Marine Biological Laboratory)の研究チームは、バイオ燃料の開発に関する検証が不十分なだけでなく、森を開墾した土地でのバイオ燃料の開発にインセンチブが与えられていることが、気候変動問題を緩和するよりも加速させているとしている。

 同研究所の論文は、世界中の積極的なバイオ燃料計画に結びついた直接的・間接的な土地利用の変更は、大量の温室効果ガスの排出につながる可能性があると注意を促している。

■肥料も問題に

 論文は両方とも、CO2排出に対するバイオ燃料の利点は、森林を切り開いた土地で生産される場合には打ち消されると指摘している。  

 ウッズホール海洋生物学研究所の研究は、バイオ燃料の生産において肥料の量を増やすと亜酸化窒素が排出され、今世紀末までにCO2が削減されたとしても温暖化の点で深刻な問題になると予想している。(c)AFP