世界各地のデルタ地帯は沈みつつある、米コロラド大研究
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【9月23日 AFP】世界の主なデルタ地帯の3分の2で、地盤沈下と海面上昇により、そこに暮らす5億人の人々に深刻な影響が出ている――。米コロラド大(University of Colorado)極地・高山研究所(Institute of Arctic and Alpine Research)の研究チームが、こうした研究結果を20日の英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」に発表した。
衛星写真によると、地球上の最も大きな33のデルタ地帯のうち、過去10年間に大洪水に見舞われたのは85%に上り、その面積は26万平方キロメートルに及んでいることがわかった。
中庸な気候変動予測シナリオで予想される海面上昇が実際に起きた場合、大洪水を受けやすくなるデルタ地帯の面積は、今世紀中に50%ほど拡大するおそれがあるという。
5段階評価でリスクが最も大きかった11のデルタのうち、3つが中国に位置している。3つとは、北部の黄河(Yellow River)デルタ、上海(Shanghai)近郊の長江(揚子江、Yangtze River)デルタ、広州(Guangzhou)の珠江(Pearl River)デルタだ。
エジプトのナイル(Nile)デルタ、タイのチャオプラヤ(Chao Phraya)デルタ、フランスのローヌ(Rhone)デルタも、これら11のデルタ地帯に入っている。
次にリスクが大きい地帯には、バングラデシュのガンジス(Ganges)デルタ、ミャンマーのエーヤワディー(Ayeyarwaddy)デルタ、ベトナムのメコン(Mekong)デルタ、米国のミシシッピ(Mississippi)デルタなど、人口が密集する7つのデルタが挙げられている。
■複数のリスク要因
多くのデルタ地帯が沈下した要因は、過去半世紀を中心とした過去のさまざまな人間活動だ。通常、デルタには、川が増水し下流域の広い範囲を侵食することで土砂が供給される。
しかし、上流のダムや川の護岸工事などが、土砂の堆積を妨げてしまう。また、地下資源の大規模な開発なども沈下を引き起こしている。例えばチャオプラヤデルタは、地下水のくみ上げにより年に5~15センチずつ沈下している。イタリアのポー(Po)デルタは、メタンの採掘により20世紀の間に3.7メートルも沈下した。
一方で、地球温暖化による海面上昇も大きな脅威だ。また、ハリケーンや台風の強大化、マングローブなどの自然の防護壁が失われることで、海面上昇の影響がますます深刻化することも予想される。
前年にサイクロン「ナルギス(Nargis)」の直撃を受けたエーヤワディーデルタでは、海面が最大で6メートルも上昇し、死亡・行方不明者は13万8000人にのぼった。(c)AFP