【8月10日 AFP】米ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙は8日、気候変動によって今後数十年間に自然災害や干ばつ、大量移住、病気の大流行などに対処するため米軍の派遣が増え、米国は大きな戦略的挑戦を受けるだろうと報じた。

 同紙は米国防総省や情報機関の専門家らが、国家安全保障における気候変動の影響に真剣に取り組み始めたとしている。

 最近行われた作戦演習や情報分析によると、今後20-30年で、特にサハラ砂漠以南のアフリカや中東、南・東南アジアなどの不安定な地域において、気候変動による食糧不足や水不足、大規模な洪水などが発生し、米国による人道支援や軍の派遣が必要になる可能性が高いという結論が出されたという。

 米国防大学(US National Defense University)が前年12月に行った演習では、バングラデシュで洪水が発生した場合、数十万人の避難民が隣国インドに流入し、宗教対立の発生や伝染病のまん延、インフラへの大きな損害などが引き起こされる可能性があるとされた。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、米軍の重要施設の多くは海面上昇や高潮への備えが十分でないことなどから、気候変動によって米軍はさまざまな変革を迫られると指摘している。

 米軍の担当部局は、バージニア(Virginia)州ノーフォーク(Norfolk)やカリフォルニア(California)州サンディエゴ(San Diego)などの主要海軍基地を、気候変動による海面上昇や暴風雨から守るための方策について研究を進めている。ほかにも、インド洋上の英領ディエゴガルシア(Diego Garcia)島の米空軍基地も気候変動の影響を受けやすいとされている。同基地は米英軍の後方支援拠点として使用されているが、海面からわずか数フィートの高さしかない。(c)AFP