【8月7日 AFP】北京五輪開幕から8日で1年。環境に優しい「緑の五輪」を掲げ、開催期間中はほとんど大気汚染がなかった北京だが、このところその空がまた曇り始めている。

 北京を慢性的に覆っていたスモッグが五輪出場選手の健康に与える影響を懸念し、北京市は、工場の移転や清掃、交通量規制、建設作業の中止など大規模な措置を実行した。

 五輪の主要会場となった「鳥の巣(Bird's Nest)」や「水立方(Water Cube)」では最新鋭の省エネデザインが採用され、環境意識が北京全体に広がるのでは、との期待が高まった。

 改善したとの見方もある一方、北京がまだ「道半ば」であることを示すデータもある。

 米大使館がマイクロブログサービス「ツイッター(Twitter)」で発表している大気質指標はここ数か月、ほぼ毎日「健康に悪い」を示していたが、前週は「危険」を記録した。この指標は、大気汚染を軽視していると広く批判されている中国の公式データの代わりに発表されるようになった。

 国際環境保護団体グリーンピース・チャイナ(Greenpeace China)の気候・エネルギー活動家のYang Ailun氏は、「緑の五輪」のおかげで市や国の政策に環境保全主義が根付いたと評価する一方、望み通りの結果にはほど遠いとの見方を示した。

「『緑の五輪』は人々の意識を変えた。人々は20年前のきれいな空を思い出し、それを取り戻せないだろうかと思うようになった。これは大きな成果だ」とした一方で、「北京は、結果が実際に出るようなコスト効果の高い政策例をひとつも示さなかった。市のとった措置はすべて巨額の費用がかかり、どこでもまねできるようなものではない。そういった観点から、五輪はそれほど成功したとは思わない」とAilun氏は語った。

 観測筋によると、北京が1年前より改善していることは間違いない。工場からの大気汚染が減少したことや、五輪開催に合わせ地下鉄工事が終了したことによって、長期的な恩恵が期待される。

 さらに、北京市は自動車の交通量規制を一部継続しており、300万台の自動車のうち数十万台が毎日走行を規制されている。ただ、専門家らは、毎日新たに1500台の自動車が街に出ており、この規制もすぐに破たんするのではないかと指摘している。

 市当局は、五輪開催以降、大気環境が劇的に改善したとしているが、専門家からは、天候や経済成長鈍化などの要因も指摘されている。

 自動車から主に排出される汚染物質の粒子について当局の示すデータの信ぴょう性にも疑問が呈されている。米大使館のデータが「危険」を示しているとき、当局のデータは「やや汚染」を示している。これは主に双方が観測する粒子の大きさの違いに起因している。米大使館が人間が容易に吸い込み、重大な健康被害を与えうる微少な粒子を測定しているのに対し、市当局はもっと大きな粒子を測定しているのだ。

 北京市環境保護局(Beijing Environmental Protection Bureau)はAFPの取材に対し、今年7月までの大気環境が前年より改善したとし、北京五輪時に実施した措置のおかげで、ここ十年で大気環境は最も良いことを強調した。同市大気汚染レベルは世界保健機関(WHO)の基準を数倍上回っている。(c)AFP/Dan Martin