【7月6日 AFP】地球が氷づけにならずに済んだのは植物のおかげ――。米エール大学(Yale University)などのチームによるこのような研究結果が1日、英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。数億年にわたり地球の気温を変動させてきたメカニズムに光をあてる成果だ。

 5000万年前の地球は極地にも多くのワニが生息していたほど暖かかった。その後、大気中のCO2濃度は低下し、地球は長い寒冷期に入っていった。

 ケイ酸塩が化学的風化する際の化学反応により大気中のCO2が減少する。長年月をかけて地下水に溶けこんだCO2は、最終的には海に吸収される。理論的にはヒマラヤ(Himalayas)山脈やアンデス(Andes)山脈が生まれた約2500万年前の造山活動によって大気中のCO2は全て吸収され、地球の気温は劇的に下がっていたはずだった。しかし実際にはそうならず、その理由は分かっていなかった。

■化学的風化が鍵

 エール大のマーク・パガーニ(Mark Pagani)准教授が主導する研究チームは、地球の炭素サイクルのシミュレーション結果と植物の成長観察から、地上の植物が冷却を防ぐ緩衝材の役割と果たしていると考えた。

 植物は光合成の過程で大気中のCO2を吸収することは良く知られているが、この研究によれば鉱物の化学的風化にも植物が果たしている役割が大きいことが分かった。

 植物の根から分泌される酸が鉱物を分解し土壌を保つことで、地下水に溶融するCO2が増えるという。ところが、植物が必要とする大気中のCO2が減少すると植物の働きが鈍るので化学的風化が鈍くなり、地下水に溶け込むCO2の量も減少する。したがって、大気中のCO2が減るスピードも遅くなり、地球の冷却化が妨げられたのだという。

 しかし、植物が地球を氷河期から救ったとしても、人為的な原因による地球温暖化にも有効だとはいえないという。

 産業革命前の大気中のCO2濃度は280ppmだったが現在は385ppmに増えている。かつて大気中のCO2の最大の供給源は火山だったが、カーネギー研究所(Carnegie Institution for Science)のケン・カルデイラ(Ken Caldeira)氏は、今では人類が世界の全火山の合計の約100倍のCO2を放出していると指摘する。化学的風化によって最終的に大気からCO2が除去されるにしても、人類が放出したCO2を除去するには数十万年かかるとみられ、気候変動を止めるには遅すぎるという。(c)AFP