太平洋の巨大な「プラスチックごみの渦」、遠征調査へ
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【5月25日 AFP】「プラスチックの渦(Plastic Vortex)」と呼ばれる、太平洋上で渦状にごみがたまっている広範な一帯を探しに、環境保護活動家や科学者のグループが近く、数か月をかけての探検調査に乗り出す。
米テキサス(Texas)州の2倍の面積に及ぶと推測する科学者もいる「プラスチックの渦」、別名「イースタン・ガーベッジ・パッチ(Eastern Garbage Patch、東のがらくたの一帯の意)」は、過去60年間をかけて、米国とアジア各国から海洋に投棄されたり、海岸から漂流したりしたごみが蓄積してできあがった。ビーチサンダルやプラスチック製の袋といったごみは、日光で徐々に分解されて極小の破片となり、波の動きによって渦巻き状に寄せられ、米ハワイ(Hawaii)州と米本土の間の海面下で集積していると考えられている。
しかし、科学的な関心が向けられ始めたのは近年になってからで、この渦に関して知られていることはほとんどないため、今回の調査によって場所を突き止め、対策を見いだすことが期待されている。
遠征のアドバイザーで、米カリフォルニア(California)州にあるスクリップス海洋研究所(Scripps Institution of Oceanography)のシニア・エンジニアのジム・デュフール (Jim Dufour)氏は、まず問題の規模をはっきりさせることが将来の海洋環境にとって不可欠だと言う。「重要性が過小評価されている。問題を分析し、修正するには多くの歳月を要するだろう」(同氏)
国連環境計画(UN Environment Programme、UNEP)によると、海上には1平方キロメートル四方につき約1万3000個ものプラスチック系のごみの破片が浮いている。ごみ汚染は5つの海流でもっとも深刻で、なかでも最悪なのが北太平洋だという。
調査の主催者によると、破片になってしまったプラスチックは小さすぎ、衛星写真ではとらえられない。しかし、これだけの分量から考えれば、魚や鳥などの海洋生物たちは知らずに「有毒のスープ」を飲み込んでいるといえる。大半は極めて毒素の高い化学物質だ。
遠征隊を率いる香港(Hong Kong)在住の実業家で環境活動家のダグ・ウードリング(Doug Woodring)氏は、「魚たちが食べている小さなプラスチックの破片は、極小の化学爆弾と同じだ」と警告する。さらに、食物連鎖の末に、人間の体内にも大量の有害物質が取り込まれる。
ウードリング氏によると、このごみの渦の位置は米西海岸から500カイリ以上沖と推測されているが、正確には科学者たちに知られていない。今回の遠征は「宇宙への遠征みたいだ」と語る。50日間の調査でサンフランシスコ(San Francisco)とハワイ間を往復し、渦の上は2回通過するはずだ。
遠征隊が乗り込む全長45メートルの船は、日本語で海の惑星を意味する「カイセイ(Kaisei)」号。トロール漁船1隻が同行し、海洋生態系へのダメージを最小限に抑えながらごみを収集する技術を試すという。
探検調査には200万ドル(約2億円)がかかり、国連環境計画と浄水器販売企業ブリタ(Brita)の後援を受けているが、現在もさらに資金提供を募っているという。(c)AFP/Guy Newey