【4月27日 AFP】ばい煙やスモッグに覆われた空をきれいにすると、植物の二酸化炭素(CO2)吸収力が極端に抑制され、地球温暖化の防止効果が減じる可能性がある――。23日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」にこのような研究結果が発表された。
 
 植物、特に熱帯林は、人類が排出する全CO2の実に4分の1を吸収し、気候変動を抑制する極めて重要な役割を果たしている。

 一般的には、大気汚染が進むと太陽光線が空気中の粒子状汚染物質に遮られ、いわゆるグローバル・ディミング(global dimming、地球暗化)によって植物は光合成ができなくなることから、温暖化防止プロセスが阻害されると考えられている。

 ところが、英ウォリングフォード(Wallingford)の英国生態学水文学センター(Centre for Ecology and Hydrology)が発表した論文によれば、正しくはその「逆」の作用が起こるという。

■汚染のひどい時期に植物の生産性が向上

「驚くべきことに、大気汚染が原因で、1960-1999年の間に植物の生産性が約25%向上したと見られる」と、同センターの研究員で研究を主導したリナ・メルカド(Lina Mercado)博士。これは、土壌に蓄えられるCO2の量が10%増加した計算になるという。

 グローバル・ディミングは、特に1950年代から1980年代にかけて顕著に見られたが、研究によればこの時期の植物の成長は非常によかったという。

 前月に発表された研究結果によると、グローバル・ディミングは現在も、欧州を除く世界各地で観測されている。

■なぜ「日陰」の状態でも光合成が促進されるのか

 グローバル・ディミングはなぜ植物の生育を促進するのか。その答えは、粒子状の大気汚染物質が光を反射する点にある。 

 大気汚染がひどいと植物が受ける直射日光は減る一方、雲や汚染物質は日光を乱反射させ、完全に日陰に隠れている小さな葉にも光が行き届くことになる。

 この「拡散放射」現象そのものはすでによく知られているが、現象が植物のCO2吸収力に及ぼす影響を地球規模で調査した研究は、今回が初めてだという。

「人々の健康のため、われわれは大気を浄化し続ける必要がある。だが、空気をきれいにすればするほど、CO2排出量を削減して気候変動を抑制するという課題は難しくなる」と、論文の共同執筆者のピーター・コックス(Peter Cox)英エクセター大学(University of Exeter)教授はジレンマを指摘した。(c)AFP/Marlowe Hood