【4月15日 AFP】米国立大気研究センター(National Center for Atmospheric ResearchNCAR)は14日、今世紀に温室効果ガスを70%削減できれば、北極海の氷の大規模な減少などの気候変動に伴う破局的な事態を避けられる可能性があるとする研究結果を明らかにした。

 NCARの科学者らによると、70%の削減が実現すれば北極の温暖化は半減し、ベーリング海(Bering Sea)北部などの一部地域で、魚類や海鳥、ホッキョクグマなどのほ乳類の保護に効果があるという。また、永久凍土の融解や大幅な海面上昇も防止するという。

 今回の研究の中心となったNCARの研究者、ウォーレン・ワシントン(Warren Washington)氏は、もはや温暖化を止めることはできないが、大規模な温暖化ガス削減が実現すれば破局的な事態を避けられる可能性はあると話す。

 産業革命の前に約284ppmだった大気中の温室効果ガス濃度は、現在380ppmを超えている。また、最近の研究によると、地球の気温があと摂氏1度上昇すれば、危険な気候変動をもたらすとされる限界点に到達するとされている。

 米国の気候変動科学プログラム(Climate Change Science ProgramCCSP)は、大規模な排出削減で大気中の二酸化炭素濃度は450ppmに抑えることが可能だとしているが、この場合、今世紀末に地球の気温は現在より摂氏0.6度上昇するという。しかし実際の二酸化炭素濃度は、なにも対策をとらなければ2100年までに750ppmに達するペースで増えている。NCARは現在のペースで温室効果ガスの排出が続けば、今世紀末の気温は現在よりおよそ摂氏2.2度上昇するとしている。

 ワシントン氏は、「今回の研究結果は、気候変動による最悪の影響を回避することができるというわずかな希望を与えるものだが、そのためには社会全体が今後数十年間で大幅に温室効果ガスの排出を削減し、今世紀中にわたってそれを続けていくことが必要だ」と語った。

 この研究結果は来週、米地球物理学会誌「Geophysical Research Letters」に発表される。(c)AFP