【1月28日 AFP】南アフリカのクルーガー国立公園(Kruger National Park)でこのほど、3頭のワニの死骸(しがい)が新たに発見された。直ちに行われた解剖と上空からの調査の結果は、科学者らが恐れていた「最悪の事態」が現実となったことを示していた。
 
 同公園では、前年5月に初めて発見されて以来、これまでに170頭あまりのワニの死骸が発見されているが、実際の死亡数はこの2倍ではないかとも見られている。

 死亡したワニは、黄色脂肪症(イエローファット)を発症していた。体脂肪が硬くなってゴムのようになり、身体を動かすことができなくなる病気だ。そのため、食べ物を摂取することも敵から身を守ることもできなくなり、水中では溺れることにもなる。

 発症の原因はまだ特定されていないものの、公園に流れ込む河川が重度に汚染されている可能性を専門家らは指摘している。

■懸念される感染拡大

 黄色脂肪症は、腐った魚を食べることで発症する場合がある。蓄積された脂肪を変性させ、抗酸化物質を激減させて脂肪の炎症を起こし、そのため激痛が伴うと言われている。発症は、これまでにワニの養殖場、飼い猫や鳥、淡水に生息するカメなどで確認されているが、ヒトに感染するかは明らかになっていない。

 オランダの半分にあたる面積に850種あまりの動物が生息する同公園では、黄色脂肪症の感染拡大が懸念されている。ワニは食物連鎖のピラミッドの頂点に立つ肉食動物であるため、ワニが感染するということは、ワニより下の階層全体も感染している恐れがある。

 目下、感染が心配されるのはライオン(ワニの死骸を食べているところが目撃されている)などのネコ科の動物だが、これまでのところそうした動物の死骸などは発見されていないという。

 また、ワニには餌を選ばず共食いする習性もあるため、公園側はワニの死骸を焼却処分にしたり、カバ2頭を射殺し餌として提供するなどの対策をとっている。 

■原因究明を急ぐ

 現在、公園の河川全体を対象に、多方面からの原因究明が行われている。今回ワニの死骸が発見されたのは公園の境界に近い渓谷だが、隣国モザンビークのダムが放水量を増やした影響でこの渓谷のシルト(沈泥)が増えていることが指摘されている。また、渓谷の川の上流は、南アフリカ有数の重工業地帯となっている。さらに、公園に流れ込む川の下流で魚が大量死したケースも報告されている。(c)AFP/Justine Gerardy