【7月29日 AFP】岩手県葛巻(Kuzumaki)町は、町全体がクリーンエネルギー作りの実験場だ。風、太陽、そしてウシの糞でさえ、再生可能な新エネルギーとして活用される。

 原油依存から脱却する方法の模索が広がり始めていた1999年、当時の中村哲雄(Tetsuo Nakamura)町長は「葛巻町新エネルギービジョン」を策定した。21世紀を目前にして「世界の原油埋蔵量の減少が指摘され、エネルギー問題が話し合われるようになってきた時代だった」と中村元町長は回想する。

 当時の同町の緊急課題は、過疎化に伴う財政難を切り抜けることだった。そこで元町長は「林業・酪農業・クリーンエネルギー」の3分野を重点項目に据えた。

 当時、町にあった発電用風車は3基だけだったが、日本最大規模の第3セクターの酪農場があり、3000頭のウシが飼育されていた。

 これらのウシのうち約200頭は現在、クリーンエネルギー作りに少しばかり貢献している。糞のメタンガスから、37キロワットの電力が生み出されているのだ。これは微々たる量で、しかもコストがかかるが、風力・太陽光発電と組み合わせて新しいクリーンエネルギー技術を創造しようとする「クリーンエネルギー・プロジェクト」の一環だ。

 同プロジェクトには、国と民間企業らが合わせて57億円を出資し、葛巻町も4500万円を投入した。風力発電用の風車を12基増設し、発電総量は2万2200キロワットに上昇。これにより、町の世帯数2900件をはるかに超える1万6900世帯に供給できるだけの発電が可能だという。

 太陽光発電システムも導入され、葛巻中学校の電力の4分の1がこれにより賄われている。自動車や住宅向けに将来有望とされるクリーンエネルギー、「燃料電池」の研究センターも町内に設けている。

 葛巻町では、クリーンエネルギーの開発と共に森の再生にも力を入れ、年間の二酸化炭素排出量を3万9000トン減らし、6000トンにまで削減することに成功したという。(c)AFP