クラゲの大発生は生態系破壊の予兆
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【6月24日 AFP】世界中の海で、クラゲが急激に増殖している。魚の乱獲や気候変動が原因とされ、専門家らは「生態系が破壊されつつある明白な印」と警鐘を鳴らしている。
■乱獲でできた海のスペースに繁殖
パリ海洋研究所(Oceanographic Institute of Paris)のJacqueline Goy氏によれば、「クラゲは海洋環境を評価するうえで重要な指針。クラゲが多いほど、その海で何らかの変化が起きている可能性が高くなる」。
クラゲは体の9割以上が水分でできており、脳を持たない原生動物だ。魚の乱獲で海にできた空きスペースをひそかに埋めつくしてきた。
海洋生物学者は、増殖したクラゲの駆除は難しいと指摘する。
国際的な地球環境保護団体「Oceana」のRicardo Aguilar氏は、「ほかの種の生息区域をクラゲが占めつつある」と語る。
■過去2世紀の大発生の周期に異変
とりわけ地中海での被害は著しい。クラゲの爆発的な増殖で固有の海洋生物が壊滅状態になり、美しい海を目玉にした観光業にも影響が出ている。
今夏も地中海沿岸区域ではクラゲの大量発生が予想されている。発生そのものは珍しい現象ではないが、問題は発生の頻度と、その後の個体数維持の長さだ。
約2世紀にわたって収集されてきたデータによると、通常、クラゲは12年周期で大発生し、その状態を4-6年維持したのち、正常な個体数に戻る。
だが今夏にも大量発生が起きれば、8年連続となる。
■生存競争で優位に、海水の温暖化も影響
その一要因として科学者らは、海洋資源の乱獲を指摘する。Aguilar氏によれば「魚類のようなせきつい動物の個体数が減少すると、無せきつい動物、特にクラゲが増加する」。また、天敵のマグロやサメ、カメの減少で捕食される危険性が減るだけではなく、小魚やプランクトンなどの餌をめぐる生存競争においても、より優位になる。
そうしたことから英セントアンドルーズ大学(University of St. Andrews)のアンドルー・ブリアリー(Andrew Brierley)氏は、「クラゲはプランクトンをめぐって魚類と生存競争関係にあるばかりか、魚類の捕食生物でもある。したがって、魚類の乱獲をやめても、いったんクラゲが定住してしまった区域で魚類の個体数を元に戻すのは困難だ」と懸念を示す。
すでに魚類の宝庫とも言われる大西洋のナミビア沿岸で、クラゲの大増殖がみられるという。
クラゲ増殖のもう1つの要因は気候変動だ。海洋温度の上昇がクラゲの繁殖周期にプラスに働くのだ。
■難しい個体数把握、消費の道もわずか
残念ながら、増殖を続けるクラゲの全個体数を特定するすべはない。骨を持たない透明なクラゲは、たとえ大型個体が複数で群れをなしていても、衛星あるいはソナーでその姿をとらえることができないからだ。
人工飼育が難しいことも、その生態を把握するうえで妨げとなっている。Goy氏によれば、生活環が判明しているクラゲの種は現在、全体のわずか2割だ。
東アジアで一部の種が食用消費されている以外に商用消費の例がないことも、クラゲの増殖に拍車を掛けている。
クラゲが地球環境に及ぼす悪影響に対する関心は、科学者らの間でようやく高まりを見せ始めたばかりだ。(c)AFP/Jerome Cartillier
■乱獲でできた海のスペースに繁殖
パリ海洋研究所(Oceanographic Institute of Paris)のJacqueline Goy氏によれば、「クラゲは海洋環境を評価するうえで重要な指針。クラゲが多いほど、その海で何らかの変化が起きている可能性が高くなる」。
クラゲは体の9割以上が水分でできており、脳を持たない原生動物だ。魚の乱獲で海にできた空きスペースをひそかに埋めつくしてきた。
海洋生物学者は、増殖したクラゲの駆除は難しいと指摘する。
国際的な地球環境保護団体「Oceana」のRicardo Aguilar氏は、「ほかの種の生息区域をクラゲが占めつつある」と語る。
■過去2世紀の大発生の周期に異変
とりわけ地中海での被害は著しい。クラゲの爆発的な増殖で固有の海洋生物が壊滅状態になり、美しい海を目玉にした観光業にも影響が出ている。
今夏も地中海沿岸区域ではクラゲの大量発生が予想されている。発生そのものは珍しい現象ではないが、問題は発生の頻度と、その後の個体数維持の長さだ。
約2世紀にわたって収集されてきたデータによると、通常、クラゲは12年周期で大発生し、その状態を4-6年維持したのち、正常な個体数に戻る。
だが今夏にも大量発生が起きれば、8年連続となる。
■生存競争で優位に、海水の温暖化も影響
その一要因として科学者らは、海洋資源の乱獲を指摘する。Aguilar氏によれば「魚類のようなせきつい動物の個体数が減少すると、無せきつい動物、特にクラゲが増加する」。また、天敵のマグロやサメ、カメの減少で捕食される危険性が減るだけではなく、小魚やプランクトンなどの餌をめぐる生存競争においても、より優位になる。
そうしたことから英セントアンドルーズ大学(University of St. Andrews)のアンドルー・ブリアリー(Andrew Brierley)氏は、「クラゲはプランクトンをめぐって魚類と生存競争関係にあるばかりか、魚類の捕食生物でもある。したがって、魚類の乱獲をやめても、いったんクラゲが定住してしまった区域で魚類の個体数を元に戻すのは困難だ」と懸念を示す。
すでに魚類の宝庫とも言われる大西洋のナミビア沿岸で、クラゲの大増殖がみられるという。
クラゲ増殖のもう1つの要因は気候変動だ。海洋温度の上昇がクラゲの繁殖周期にプラスに働くのだ。
■難しい個体数把握、消費の道もわずか
残念ながら、増殖を続けるクラゲの全個体数を特定するすべはない。骨を持たない透明なクラゲは、たとえ大型個体が複数で群れをなしていても、衛星あるいはソナーでその姿をとらえることができないからだ。
人工飼育が難しいことも、その生態を把握するうえで妨げとなっている。Goy氏によれば、生活環が判明しているクラゲの種は現在、全体のわずか2割だ。
東アジアで一部の種が食用消費されている以外に商用消費の例がないことも、クラゲの増殖に拍車を掛けている。
クラゲが地球環境に及ぼす悪影響に対する関心は、科学者らの間でようやく高まりを見せ始めたばかりだ。(c)AFP/Jerome Cartillier