【6月25日 AFP】世界自然保護基金(World Wildlife FundWWF)は23日、酸素が欠乏し生物が生存できない「海のデッドゾーン」と呼ばれる酸欠海域の拡大で、バルト海(Baltic Sea)の生態系が崩壊する恐れがあると警告した。

 WWFスウェーデン事務所のLasse Gustavsson所長は声明で、「バルト海で酸欠海域が拡大を続ければ、生態系全体が完全に崩壊する恐れがある」と指摘した。

 植物の成長を促す窒素やリンなどの栄養素が、農業用水などの排水に含まれて海に過剰に流れ込むと、藻類などの生物が大量繁殖する。死んだ藻類が海底に沈むと、それを分解するバクテリアが海中の酸素をすべて摂取し尽くし、生命が死滅する。このプロセスを富栄養化と呼ぶ。

 WWFによると1995年以降、世界中の酸欠海域の数は、44から169か所に急増している。世界資源研究所(World Resources Institute)の統計によると、前年の世界での酸欠海域は、スウェーデンの耕作可能地の2倍、約7万平方キロに及ぶという。

 また、最大酸欠海域10か所のうち、7か所がバルト海にあり、バルト海は長い間、環境的な大惨事の危機に瀕していると考えられてきた。半閉鎖海のバルト海から有毒・有害物質を完全に取り除くためには、ほかの大きな海域よりもはるかに年月がかかると見られており、2004年には特に保護が必要な特定の水域(%%Particularly
Sensitive Sea AreaPSSA%%)に指定された。

 WWFは声明で、バルト海周辺地域からの排水、特に農業用水の排出削減に向けた、迅速かつ断固とした措置を求めた。(c)AFP