【6月19日 AFP】世界の海水温度は、地球温暖化が原因で過去40年間に予想されていた数値の1.5倍の速さで上昇しているという。オーストラリアと米国の気象研究チームがこのような研究結果をまとめ、18日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」で発表した。

■過去予想の1.5倍の速さで海水温が上昇

 海水温度が上昇すると海水が膨張し、水位の上昇を招く。その結果、小さな島国は水没し始め、人口が密集する低地のデルタ地帯も世界各地で壊滅する恐れがある。専門家は警戒を強めているが、今回の研究結果も、海水温度の上昇が加速と、それに伴う海水位の上昇に警鐘を鳴らすものとなった。

 海水位の上昇には原因が2つある。1つは海水の熱膨張、もう1つは氷の融解による増水で、両方とも地球温暖化によって引き起こされる。この2つが海水上昇にどの程度影響を及ぼすかを把握することは、気候変動を理解し今後の温度上昇を予測する上で非常に重要とされている。

 例えば、グリーンランドの氷床が融解すれば世界の海水位は7メートル上昇し、バングラデシュの首都ダッカ(Dhaka)や中国の上海(Shanghai)などは水没することになる。

■観測データと海水上昇モデルが初めて一致

 これまでに作成されたコンピューターでのシミュレーションによる気候変動モデルや、専門家が実施した海洋からのデータ収集による観測結果には差があり、信ぴょう性が乏しかった。

 ところが、オーストラリア気象局の気象・気候研究センターのCatia Domingues氏率いるチームによる今回の研究で、初めて観測データと海水上昇モデルが一致した。

 研究では、新たな技法により1961-2003年の、深さ700メートルの海洋における温度を算出。その結果、海水温の上昇により海水位が毎年0.53ミリ上昇していることが判明した。

 「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)」が前年に発表した報告書では0.32ミリとなっており、今回の研究がIPCCの数値を修正する形となった。

 最近の研究の結果、海水位の上昇の要因として氷の融解が重要で、その影響が増大していることが分かっている。だがIPCCの報告書は22世紀の海水位の上昇を予測する際、熱膨張の影響のみを考慮していたため、批判を受けている。

 地球の気象システムでは熱の90%以上が海洋に吸収され、気候変動への影響に対する緩衝機能を果たしている。(c)AFP/Marlowe Hood