【6月12日 AFP】香港、マカオ、中国南部では、大気汚染が原因で毎年1万人以上が命を落としている。香港のシンクタンク「Civic Exchange」が11日、このような調査結果を発表した。

 公衆衛生・環境科学者らが、香港、マカオ、そして過去30年の中国の経済ブームに乗って工場地帯が形成された広東省珠江デルタ(Pearl River Delta)で2003-06年を対象に調査を実施した。

 調査に参加した香港大学(Hong Kong University)のAnthony Hedley教授(地域医療)は、「1日1万人という数字はとても控えめに見積もった数字であり、それらの死は防げるものでもある」と語った。

 調査書は、大気汚染による医療費および生産損失額は年間で67億元(約1040億円)に達すると試算している。調査対象となった2003-06年に撮影された衛星写真も、大気の状態が悪化しつつあることを示している。

 Hedley教授は、住民は大気汚染が原因の心臓血管、呼吸器系の疾患に苦しんでいると指摘。今回は、大気汚染が妊婦や胎児に与える影響については調査できなかったという。  

 科学者らは、香港、マカオ、広東省の政府に対し、大気管理の枠組み作り、大気環境基準の強化、汚染データの常時公表を求めている。また、香港政府には陸上・海上輸送時のCO2排出量削減に向けての早急の努力を要請している。

 ビジネス界では、香港の深刻な大気汚染が企業の進出に二の足を踏ませ、「国際金融センター」の地位を危うくしているとの指摘がある。(c)AFP