【3月18日 AFP】中国系インドネシア人のErfin Hongdoyoさんは水槽から慎重に黒い布を外すと、「宝物」を披露した。大きくて赤い希少な淡水魚、アジアアロワナ(学名scleropages formosus)だ。

「スーパーレッド」と呼ばれるアジアアロワナは、ボルネオ(Borneo)島原産で体長45センチほど。現在、絶滅の危機にひんしており、インドネシア、マレーシア、シンガポールでしか飼育が許されていない。

 極めて高価な魚であることから、アジアの富裕層の間では新たな富の象徴として人気が上昇している。こうした人気が、アロワナを絶滅の危機から救う可能性すらあるという。

「竜みたいだ」と語るHongdoyoさんは、3000万-4000万ルピー(約32万-42万円)以下では手放す気はないという。

 最近インドネシアの首都ジャカルタ(Jakarta)で開かれた展覧会では、1匹が2万ドル(約195万円)、2万2100ドル(約215万円)の値を付けた。展覧会の期間中、推計総額100万ドル(約9700万円)以上になる約50匹のスーパーレッドを24時間の警護付きで保管する特別室も設置された。

 国際自然保護連合(World Conservation UnionIUCN)のレッドリストにも掲載されているアロワナの人気は、中国、日本、台湾、インドで高まっているという。中国では健康、幸運、繁栄、家庭円満、魔よけの象徴とされる竜に似ていることから人気がある。一方、超能力があると信じたり、美術品のように富や教養の象徴だと考えたりする人もいることも人気の秘訣(ひけつ)だ。

 アロワナに大金をつぎ込んでいるのは中国人だけではない。アロワナ人気の高まりから、専門の養魚場も登場している。中には株式上場し有力事業家によって経営されているものもある。

 アロワナの飼育は難しく、養殖家はワシントン条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)に登録する必要がある。売買の際には飼育されて少なくとも2代目以降であることを示す証明書の添付やマイクロチップを埋め込むことが義務付けられている。

 これらの予防措置にもかかわらず、人気の高いアロワナは利益幅が大きいため極めて高度な密輸が横行し、個体数は激減しているという。

 ジャカルタに拠点を置くフランス開発研究所(French Institute of Research for Development)の遺伝学専門家Laurent Pouyaud氏によると、スーパーレッドはインドネシアでは絶滅しかけており、タイではおそらくすでに絶滅しているという。昆虫を餌とするアロワナは1.5メートルの高さまで跳ねるため、容易に捕獲できる。また、水面近くで目が光るため、網で捕まえることもできるという。(c)AFP/Sebastien Blanc