【3月5日 AFP】北米に生息する希少種のアメリカシロヅルは60年以上も前から絶滅の危機に瀕しているが、現在、「ウィンドファーム(風力発電地帯)」という新たな脅威にさらされている。

 環境にやさしいとされるウィンドファームの格好の設置場所とされるのは、風に恵まれた中西部のプレーリー(大草原)だ。だが米魚類野生生物局(US Fish and Wildlife Service)のTom Stehn氏によると、この地域はアメリカシロヅルの移動経路に重なるという。

 アメリカシロヅルは、20世紀に15羽にまで激減したが、保護団体の献身的な努力により野生の個体数は360羽にまで回復した。

 ところが米下院が前週、再生可能エネルギー開発者への税制上の優遇措置の延長を可決したこともあり、風力発電会社はウィンドファームに、ますます熱い視線を向けるようになっている。

 自然環境保護団体「Audubon」のGreg Butcher氏は、「地球温暖化を促進しない風力エネルギーはわれわれとしても大賛成」と前置きした上で、「アメリカシロヅルがタービンと衝突しないよう、設置場所や設計に気を配る必要がある」と指摘する。

 タービン以上に懸念されるのは、アメリカシロヅルなど北米にしか見られない大型鳥の生息域が狭まることだ。アメリカシロヅルの過去の絶滅危機は、まさに生息域の減少によりもたらされた。

 それどころか、その他の鳥類の生息をも脅かすことになるとButcher氏は言う。その一例が、建造物のそばには巣を作らないとされるプレーリーチキンだ。既に亜種2つのうち1つは絶滅し、1つは絶滅危惧種となっている。

 米国風力協会(American Wind Energy AssociationAWEA)によると、再生可能エネルギー産業は、ウィンドファームがもたらす鳥類の危機については認識しており、環境団体、政府機関、大学などと共同で、野生生物を傷つけない開発のあり方を検討中だという。

 AWEAによると、米国の家庭が前年消費したエネルギーのうち、風力発電によるものはわずか1%。この比率を年間25%ずつ上げていく計画だが、風が吹かない場所にウィンドファームを建設するのは経済的な観点から実現不可能というジレンマを抱えている。(c)AFP/Karin Zeitvogel