【2月9日 AFP】シンガポール動物園(Singapore Zoo)は9日、英国のフィリップ殿下(Prince Philip)や米国人気歌手マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)さんとも「交流」のあった同動物園で最も有名なオランウータンAh Mengが8日、老衰のため死亡したと発表した。地元メディアの報道によると48歳だった。人間の年齢に換算すれば95歳近い。

 メスのオランウータンAh Mengは1971年、インドネシアのスマトラ島(Sumatra)で違法にペットとして飼育していた家族から保護され、同動物園に連れてこられた。

 当時から世話をしていたAlagappasamy Chellaiyah園長は、「Ah Mengの旅立ちはとても悲しい。彼女がいないことに慣れるには時間がかかるだろう」と語った。

■一躍人気者、世界の有名人とも「交流」

 Ah Mengは同動物園に来ると、たちまち人気者となった。彼女を一躍有名にしたのは1982年に行われた「Breakfast with an Orangutan(オランウータンと朝ごはん)」というイベント。参加者はAh Mengと一緒に記念撮影ができるもので、オランウータンの存在と、またオランウータンの自然の生息地が急速に失われていることを広めるために開催された。

 イベントの参加者には、フィリップ殿下やマイケル・ジャクソンさんのほか、英国出身の女優エリザベス・テイラー(Elizabeth Taylor)、米国のマジシャン、デビッド・カッパーフィールド(David Copperfield)などもいたという。

 Ah Mengが有名になったことから、シンガポール政府観光局(Singapore Tourism Board)は1992年、Ah Mengを特別大使に任命した。現在に至るまで、人間以外でこの大役を担ったのはAh Mengしかいない。

 同動物園によると、「追悼式典」が10日に行われ、一般の人々もAh Mengを最後に一目見ることができるという。

■絶滅危惧種のオランウータン

 Ah Mengは子ども4頭、孫6頭をもうけた。同動物園ではこれまで、33頭のオランウータンの繁殖に成功しており、一部は繁殖貸与や交流のため世界中の動物園に送られている。

 オランウータンはインドネシアのボルネオ(Borneo)島とスマトラ島の原産で、スイスに本部を置く国際自然保護連合(World Conservation UnionIUCN)が絶滅危惧種に指定している。IUCNによると、生息地の減少、密猟、違法取引などによって、生息数は過去60年間で半数以下に減少しているという。(c)AFP