【12月18日 AFP】気候変動に伴う最悪の予想が現実になった場合、ただでさえ地球温暖化の影響を受けている北欧の観光業界は、トナカイならぬラクダのそりに乗った半ズボン姿のサンタクロースをPRしなければならなくなるかもしれない。

 サンタクロースが観光の目玉になっているフィンランド。「サンタクロース村」として知られるロバニエミ(Rovaniemi)の街では、毎年秋の終わりになると住人や商店主、旅行業者、トナカイ飼い、議員までが、空を見上げて雪が降るのを待ちわびる。

 ロバニエミの「サンタクロース事務所」には、「本物の」サンタに会うために年間34万人が訪れる。しかし過去3、4年は厳しい状況が続き、今年も12月に入りクリスマスが迫っても、地面に積もった雪は20センチのみ。スノーモービルや犬ぞり、トナカイぞりを動かすのにやっとの深さだという。

 かつては冬中凍結し、観光客がスノーモービルやそり滑りを楽しんだ川や湖も、まだ凍っていない。

 フィンランドのラップランド地方の観光収入は直接・間接合わせて2億3500万ユーロ(約383億円)に上り、このうち約60%は冬季の収入だ。

 フィンランドの冬の平均気温は2050年までに3-6度、2080年までには4-8度上昇すると予想されている。ロバニエミの冬の平均気温は現在のマイナス15度から、マイナス8度に上がる予想だ。

■トナカイ飼育も危機に

 北極地域に7万人が住む先住民族サーメ人にとっての伝統であり、主な収入源となってきたトナカイ飼育も危機にひんしている。

「去年トナカイの群れを追ってロシア北部にいた時は、気温がマイナス28度から零度以上に上がった。次いで雪と雨が降り、マイナス40度になった」と話すのは、ロバニエミの研究所に務める生物地理学者、ブルース・フォーブズ(Bruce Forbes)さん。

 トナカイが冬を生き延びるためには、地面に生えるコケのような地衣類を食べる必要がある。しかし気温の大きな変動により雪の層が固く凍ってトナカイが割ることができなくなり、「人間がトナカイのために氷を割ってやらなければならなくなった」とフォーブズさんは言う。

 トナカイ飼育に携わる男性によると、トナカイが長い冬に備えて脂肪を蓄えるためのキノコが生えなくなったり、地衣類が食べられなくなったりしたせいで、穀物や干し草を与えることが必要になり、トナカイ飼育は採算が取れなくなっているという。(c)AFP/Gael Branchereau