【12月12日 AFP】米フロリダ(Florida)州沖ののどかな島、ガスパリラ(Gasparilla)島の住民が、メキシコから持ち込まれた凶暴なクシトゲオイグアナの対策に乗り出した。しかし、このイグアナはしぶとく、美しい庭園の草木や電気ケーブル、カメの卵などをむさぼり食ってしまうという。

 ターポン釣りで知られるこの静かな島の住民の1人、ジョン・ブルゴアン(John Bourgoin)さんは「これは侵略だ。やつらは地獄のように意地汚い。しっぽには大きなトゲがあって、イヌにさえかみつくんだ」と苦悩をあらわにする。

 そこで島の住民1200人は、その10倍にも上るイグアナに正面から立ち向かうことを決意した。住民は、空気銃で武装し、イグアナを見かければちゅうちょなく撃つだけでなく、イグアナを始末する専門家も雇っている。

 イグアナ捕獲専門家のジョージ・セラ(George Cera)さんはガスパリラ島でこれまでに4000匹のイグアナを殺してきたが、厳しい状況に直面している。

■島の厄介者

 ペットとしても親しまれているおとなしい緑色のイグアナとは違い、黒イグアナとしても知られるクシトゲオイグアナは攻撃的で肉食だ。メキシコの一部では一般的だが、もともとフロリダには生息しておらず、1970年代にペットとして持ち込まれた3匹から増殖した。雌は年間50個の卵を産むことができる。

 このイグアナによる問題は、島を美しく彩る植物を食べてしまうだけにはとどまらず、巣をつくる鳥やカメの卵のほか、電気ケーブルまでも食べてしまう。さらに、サルモネラ菌を保有しており、住宅のトイレに浮かんで住民を驚かせることもたびたびあるという。

 イグアナは砂の中に潜伏することを好むため、ハリケーンの上陸から島を守る砂の山を崩壊してしまうことも懸念されている。「この動物は何の意味もない」とブルゴアンさんは語る。

■最も人道的な殺し方

 セラさんを雇う前、住民たちはほかのイグアナ退治の方法についても考えた。

 あるマイアミ(Miami)の起業家は、イグアナ2000匹を買い取り、中米でイグアナを珍味とする地域に輸出することに興味を示したが、島の住民たちはこの事業が利益を生み出すことには懐疑的だった。

 また、ある地元住民は車の排ガスを水槽の中に引き入れるイグアナ用のガス室を考案したが、そのような殺し方はフロリダ州では違法だと地元当局から指摘を受けた。

 一方、地元当局も人道的な殺し方としてわなに掛けて凍結する方法を提案したが、最終的にはあきらめた。

 ブルゴアンさんは「唯一の方法は、できるだけ多くを撃ち殺すことだ」とし、頭を打ち抜くことが最も速く、痛みのない方法だと指摘している。(c)AFP/Patrick Moser