【11月27日 AFP】環境への悪影響などが問題視されている中国の「世界最大の発電プロジェクト」、三峡ダム( Three Gorges Dam)をめぐり、ダム建設を管轄する政府当局者は27日、さまざまな環境被害を上回る利益がもたらされているとの見解を新たに示し、不安を一掃しようと努めた。

 三峡ダムは中部湖北省(Hubei)宜昌市(Yichang)の長江(揚子江、Yangtze River)中流に建設され、前年から稼働を開始しているが、中国の当局者は先に、周辺地域で地滑り、土壌浸食、水質汚染などの被害が出ていることを明らかにしていた。

 しかしダム建設当局の責任者、Wang Xiaofeng氏は27日、記者会見を開き、「全体的に見ると、三峡ダムが生態学的環境にもたらす影響は、利益のほうが負の影響を上回る」と述べた。具体的には、長江の洪水や沈泥が減少する、エネルギー源としての石炭への依存度を低減する、といった「環境的利益」がもたらされると指摘した。

 また、指摘されるさまざまな問題はいずれも驚くに当たらないとも述べ、1991年、ダム建設着工の3年前に行われた環境影響評価の推定範囲内にとどまっていると強調。「環境への影響については、負の影響が考えられるので、克服するよう努力するとすでに述べたとおりだ」と語った。

 しかし建設当局は、9月にはまったく反対の見解を示している。

 国営新華社通信(Xinhua)によれば、9月に三峡ダム問題について開かれた会議の席で当局は、この巨大プロジェクトにより周辺地域の環境は「破滅的状況」になると警告した。このニュースは世界各地で大々的に取り上げられた。

 新華社は会議の席でのWang局長の発言として、「三峡ダムプロジェクトが生態ならびに環境にもたらす影響について、警戒を怠ってはならない。一時的な経済の繁栄のために環境を犠牲にすることは、絶対にあってはならない」と報じている。

 この会議では、巨大ダムの影響ですでに長江の多数個所で河岸が浸食され、水位の頻繁な変動と相まって、大規模な地滑りを誘発していると報告された。

 国内では10月にも、ダム周辺地域に居住する400万人を他地域に新たに移住させる必要があると報じられた。

 しかしその後、新華社は三峡ダムについて姿勢を一変させ、肯定的なニュースしか報じていない。そうした報道姿勢には、9月の会議での否定的な報告を打ち消す狙いがあるとみられる。(c)AFP