【11月13日 AFP】生分解性の有機物質から水素ガスを作り出す手法を開発したとする研究結果が、12日発行の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。この技術により、燃焼してもクリーンな燃料を豊富に供給できるようになるかもしれない。

 研究を行ったのは、ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)のブルース・ローガン(Bruce Logan)教授(環境工学)をはじめとする研究チーム。

 新たに開発された技術では、簡単に入手できる上に再生可能なセルロースやグルコースといったバイオマスから、安価で効率的に水素ガスを生産できる。生産された水素ガスは、自動車用燃料、肥料生産用、あるいは飲料水処理用に利用が可能だ。

 多くの公共交通手段が、ガソリンの代替燃料として水素を利用したエンジンへと転換しつつある。しかし現在使われている水素の大半は、天然ガスなど再生不可能な化石燃料から生産されてたものだ。

 新技術は、電子を生み出す細菌を入れた「微生物燃料電池」に少量の電荷をかけ、水素ガスを生産するもの。

 微生物燃料電池は、電子を陽極に渡すという細菌の働きを利用して作動する。陽極に渡された電子が陰極に移動することで電流が発生する。この過程で、細菌はバイオマス物質中の有機物を消費する。外部から電荷をかけることで、陰極での水素ガスの発生を促す仕組みだ。

 これまで、このプロセスは低効率で水素ガス生産量も少なかったが、研究チームは装置を化学的に改善し、これらの問題を克服した。

 実験では酢酸を使い、理論的に可能な最大生産量の99%に相当する水素ガスの生産に成功した。

 ローガン教授は「加えた電気エネルギーを288%上回る水素エネルギーを得ることができた」と語った。

 新技術は、現段階ですでに経済的に実現可能で、多くの紙面をにぎわしているバイオ燃料のエタノールをしのぐ可能性がある。

「現在は、燃料としてのエタノールに注目が集まっているが、セルロースから生産するエタノールのコストダウンには10年はかかるだろう」とローガン教授は指摘する。

 新技術をすぐに適用できるものとしては、水素を発電に利用する燃料電池自動車が挙げられる。また、木片を水素に変換して肥料として使うことにも適用できる。(c)AFP