【11月6日 AFP】最も汚染された都市の1つに挙げられるエジプトの首都カイロ(Cairo)の上空がまた、毒性の高い黒い雲に覆われている。この黒い雲は、なぜか毎年秋になるとカイロの空に戻ってくるのだ。

 膨らみ続ける人口に加え、数百万台の車が出す排ガスと、毎年稲株を燃やしたときに出る高濃度の有毒ガスが、黒い雲の主因とみられている。

「汚染粒子が1立方メートル当たり540マイクログラムもあり、これは政府が定めた基準値の3倍、世界保健機関(World Health OrganisationWHO)基準値の10倍にも当たる」と気象学者のMagdi Abdel Wahab氏はAFPに語った。

 厚い「鉛の毛布」は毎年カイロを覆い、1600万人の住人に深刻な健康不安を与えている。

 専門家によると、主に排ガスによる二酸化窒素と一酸化炭素は、汚染粒子と混ざり合って、「致死性のカクテル」を生み出しているという。

 WHOは汚染粒子濃度を年間1立方メートル当たり20マイクログラムまで下げるよう勧告している。汚染粒子は気管支炎から奇形胎児まで、さまざまな問題を引き起こす可能性がある。

 呼吸器疾患の専門医は「診療所を訪れる患者はここ数週間で50%増えた。汚染のせいだ」と指摘する。

 カイロに黒い雲が現れ出したのは1999年のこと。北京(Beijing)やメキシコ市(Mexico City)と同様に、このころカイロ市民はすでに急激に進みつつある汚染の対処に苦慮していた。

 以降、黒い雲は毎年9月になると決まってカイロの空に現れては初冬まで居座り、毎年最大5000人の命を奪う汚染を悪化させている。

 ナイルデルタでは昔から、翌年の収穫のために土壌を肥やす方法として、稲刈り後に残された稲株を燃やす習慣がある。工場や車からの汚染に加え、焼き畑はカイロの環境には荷が重すぎるようだ。

 フランスとイタリアの共同研究チームは、カイロの汚染は北京の3倍深刻だと指摘する。北京もカイロと同じく、急速な経済成長の裏で汚染に苦しんでいる都市だ。

 このような現状を受け、政府も対策に乗り出した。稲株を燃やすことを禁止する法律が成立し、違反者には罰金が科される可能性もある。さらに、国営の稲株リサイクル工場の建設も計画しているという。

 すでに1件のリサイクル工場が建設され、稲株から肥料が製造されている。しかし、稲株を圧縮する設備が不足している上に、稲株が長い間放置されているとの農家からの不満もあり、プロジェクトは順風満帆とは行かないようだ。

 一方、マギード・ジョルジュ(Maged George)国務相(環境問題担当)は、2010年までには黒い雲がなくなると、かなり楽観的な見方を示している。(c)AFP/Alain Navarro