【10月8日 AFP】カリフォルニア州セントラル・コースト(Central Coast)沿岸に生息するラッコの個体数が環境汚染、漁業、そして原因不明の感染症により激減し、米地質調査所(US Geological SurveyUSGS)は警鐘を鳴らしている。

 同調査所の海洋生物学者でラッコの専門家でもあるジム・エステス(Jim Estes)博士は、「ラッコがいなくなればケルプ(大型海藻類)の森は不毛の海に変わるだろう。ラッコのいない所ではケルプはすでに衰えの兆候を示している」と語る。ラッコはケルプを食べてしまうウニをエサにすることで、海の環境バランスを保つ役割を果たしてきた。

 同州ではラッコの保護を目的とした新しい法律「The Southern Sea Otter Research and Recovery Act」を施行。5年にわたり、2500万ドル(約29億円)の予算がラッコの調査と保護に充てられる。

 過去のピーク時には1万6000頭いたラッコは19世紀に毛皮目当ての狩猟の対象となり、一時は絶滅の危機にあった。1977年に絶滅危惧種に登録され、現在は約2900頭まで持ち直したが、死亡率は近年高まっており、特に生殖期のメスのラッコの死亡率が高いという。

 カリフォルニア州魚類鳥獣保護局(California Department of Fish and Game)の研究者、David Jessupさんは、「ラッコの死亡率は海洋環境の悪化を反映している」と述べるが、意外な環境汚染要因も指摘されている。死んだラッコの約半分から検出された感染性微生物トキソプラズマの出どころが飼いネコのふんであることが確認されたため、カリフォルニア州は2006年から、猫のトイレ用の砂をトイレに流さないよう呼び掛ける警告文をパッケージ上に載せ始めた。ほかに、フクロネズミのふんも感染の原因になっているという。

 最近の米国獣医師会(American Veterinary Medical Association)の調査によると、毎年100トンを超える動物のふんがカリフォルニアの3都市から海に排出されているという。

 保護活動家や海洋研究家らは、陸と海の環境の密接なつながりについて住民の認知度を高め、海洋汚染を少しでも緩和したいと表明している。(c)AFP/Zachary Slobig