【3月18日 AFP】冷戦を象徴するドイツの「ベルリンの壁(Berlin Wall)」の一部を住宅地開発のため撤去する計画が物議を呼んでいる問題で、壁が崩壊した1989年に現地で自由の歌を歌った米歌手・俳優のデヴィッド・ハッセルホフ(David Hasselhoff)さん(60)が17日、ベルリン(Berlin)を再訪し、壁の前で撤去反対を訴えた。

 米テレビドラマシリーズ「ベイウォッチ(Baywatch)」や「ナイトライダー(Knight Rider)」で主演し人気を博したハッセルホフさんは、1989年の大みそか、東西ドイツ統一の象徴となったブランデンブルク門(Brandenburg Gate)前で数十万の聴衆を前に「ルッキング・フォー・フリーダム(Looking for Freedom)」を熱唱したことから、ドイツ人の間で広く愛されている。

 ハッセルホフさんは寒空のなか集まった人々に向け、「皆さんの力になりたくて来ました。ベルリンの壁は歴史の一片だと信じています」「命を懸けて自由を求めた人たち全員のことを忘れてはなりません」などと力説。これに応え、人々からは「デヴィッド、あなたは私たちのヒーローだ!」との叫び声が口々に上がった。中には、水難監視救助隊の活躍を描いた「ベイウォッチ」にちなんで救命浮輪を掲げたファンの姿も見られた。

 ベルリンの壁は、28年間に及ぶ東西ベルリン分断の暗い歴史を現在に伝える数少ない遺産であるとともに、観光名所としても人気を集めてきた。ところがこのほど、その壁の中で「イースト・サイド・ギャラリー(East Side Gallery)」として知られる約1.3キロメートルの部分のうち、22メートルが宅地開発のため撤去されることが決まった。

 この計画をめぐりベルリンでは、撤去作業が始まった3月初頭から反対運動が激化。クラウス・ウォーウェライト(Klaus Wowereit)ベルリン市長も壁保存の立場を表明した。

 住宅地建設を進める開発業者は、「イースト・サイド・ギャラリー」の一部撤去は安全上の理由から必要だと主張。地元当局の指示に従っているだけで、自社の宅地開発計画とは全く無関係だと反論している。(c)AFP