【3月3日 AFP】2009年に他界したマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)は、「キング・オブ・ポップ」と形容されてきた。だが、実際は王様ではなく、ポップの王子様だったのかもしれない――。フランス人医師が、9日に発売される著書「Michael Jackson, the secret of a voice(マイケル・ジャクソン、その声の秘密)」のなかで、マイケルの並外れた声域は、思春期に投与された治療薬が原因との見方を示した。

 この医師は、マルセイユ(Marseille)のティモンヌ大学病院(Timone University Hospital)の血管外科の教授でオペラファンでもあるアラン・ブランシェロー(Alain Branchereau)氏だ。

 マイケル死去の報が世界をにぎわせた時、教授はマイケルが1つの超常現象であることに気づいた。その理由を、マイケルが「カストラート(少年の声域を保つために去勢した男性歌手)の声」の持ち主だったことにあると感じた教授は、内分泌学者ら同僚の医師たちと議論を重ね、マイケルの声域の広さは抗男性ホルモン物質「シプロテロン」による化学的な去勢が原因との結論に至った。

「マイケルが12歳のころに皮膚疾患に悩んでいたことは、マイケル自身も悲惨な経験として語っている周知の事実だ。おそらく、マイケルは周囲の人間から、特効治療薬としてシプロテロンを勧められたのではないか」(ブランシェロー教授)

 ブランシェロー教授によると、思春期の成長を妨げるシプロテロンを投与されると声変わりが起きない。教授は、シプロテロンに関する書物20冊以上を調べ、写真を検証したほか、皮膚科学や音声生理学、形成外科、泌尿器科などの専門家らの意見を求め、少年合唱団の元団員からも話を聞いたという。

 シプロテロンは体毛や喉頭の成長を妨げるほか、骨の成熟にも影響するため、骨格が細く胸部の発達した体になる。シプテロン治療を受けた患者は、治療が終わった後も、「一生、体は大人だが喉頭は子どものまま」だという。

 ブランシェロー教授は、男性は思春期から青年期にかけて声変わりするため、声のコントロールが難しくなるという事実にも言及。そのうえで、マイケルは子ども時代から歌うことを一度も休止していないと指摘した。

「私の理論で重視するのは、3オクターブという広い声域を持ったマイケルの声質だ。成熟した大人の男性で、3オクターブもの声域をカバーできる人間など、他には知らない」(ブランシェロー教授)

 その一方で、教授は同書の執筆に際してジャクソン家の人間やマイケルの友人らとは接触していないことを認めた。「証拠は永遠に得られないだろう。マイケルの取り巻きたちが、何かを話さない限りは」(c)AFP