【1月29日 AFP】宗教団体サイエントロジー教会(Church of Scientology)のメンバーでもある米俳優トム・クルーズ(Tom Cruise)さんの伝記で、主に同教会について記し物議を醸している『Tom Cruise: An Unauthorized Biography(トム・クルーズ:非公認の伝記)』の著者アンドリュー・モートン(Andrew Morton)氏に、新たな味方が出現した。同教会の幹部デビッド・ミスキャベッジ(David Miscavige)氏の姪にあたるジェナ・ミスキャベッジ・ヒル(Jenna Miscavige Hill、23)さんだ。

 ヒルさんは、ネット上に手紙を公開し、同教会により自身の家族が引き裂かれた事実を暴露。さらに、14日に同著を「虚偽に満ちた偏狭的で中傷的な攻撃」と糾弾した同教会のKarin Pouw氏に対し、「伝記中のサイエントロジーに関する真実を否定するだけでなく、まったくの嘘を並べたことにとてもショックを受けた」と抗議した。

 ヒルさんは特に、サイエントロジーを支持しない家族とは絶縁するよう会員に圧力をかけていることを、同教会が否定したことに抗議している。ヒルさんの家族も、この方針により離れ離れになった。ヒルさんの父親ロン・ミスキャベッジ(Ron Miscavige)さんはデビッド氏の兄にあたるが、ヒルさんは12歳のときに両親と引き離された。両親は2000年、ヒルさんが16歳のときに教会を正式に脱退したが、ヒルさんは教会に残ることを選択したという。

 ヒルさんによると、両親と話すことを禁じられただけでなく、両親がかけてくるかもしれないので電話に出ることも禁じられた。両親や友人からの手紙も没収された。また、両親と会えるのは1年に1度、最大4日間だったというが、これも両親が法的措置を取ると訴えたあとで、やっと許されたものだという。さらに、両親を訪ねたあとでは、両親が教会の批判をしていなかったかと尋問されたという。

「サイエントロジーは、わたしの家族もひとつにできないのに、『教会は家族をひとつにする』なんて誰が信じるというのだ」と憤るヒルさんは、手紙を公開した理由について「この事実を世間に知ってもらい、教会に方針を転換してもらいたい」と語っている。

 ヒルさんの手紙についてPouw氏は、「教会としては14日に声明を出した通りだ」としている。

■問題の伝記はベストセラーに

 1954年、SF作家だった故L・ロン・ハバード(L. Ron Hubbard)氏が創設したサイエントロジー教会は、創設から約20年後に正式に宗教と認識されるようになった。しかし、ドイツ、ベルギー、フランス、ギリシャなどでは、会員の財産を搾取していると非難されることもある。

 モートン氏の同著は、発売開始から1週間で、ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙のノンフィクション(ハードカバー)部門で売り上げランキング1位に輝いた。クルーズさんは同教会の広告塔としての役割も担っており、同著はそのことを主に取り上げている。(c)AFP/Jonny Jacobsen