【12月17日 AFP】仏俳優ジェラール・ドパルデュー(Gerard Depardieu)さん(63)は16日、課税を逃れるためにベルギーに移住したことを仏首相に「情けない」と呼ばれたことを受け、フランスのパスポート(旅券)を返上すると宣言した。

『シラノ・ド・ベルジュラック(Cyrano de Bergerac)』や『愛と宿命の泉 PART I/フロレット家のジャン(Jean de Florette)』などの映画に主演したドパルデューさんは、ジャンマルク・エロー(Jean-Marc Ayrault)仏首相に宛てた公開書簡を仏日曜紙ジュルナル・デュ・ディマンシュ(Le Journal du Dimanche)で発表。その中で、長年数百万ユーロの税金を納めてフランスを支えてきたにもかかわらず、不公平に扱われたと主張した。

「私を支持してほしいとは思わないが、せめて敬意は払ってほしい。フランスを去った多くの人々は私のように侮辱されてはいない」(ドパルデューさん)

 フランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領の社会党政権は、年収100万ユーロ(約1億1000万円)を超える人に75%の所得税を課す方針を発表。これを受けて、フランスの富裕層の一部がベルギーに移住し、ワイン畑やパリ(Paris)でレストラン3店舗を経営するドパルデューさんもこの動きに加わった。

 書簡の中でドパルデューさんは、社会党がフランスの才能の国外流出を招いていると批判。「私が去るのは、あなたが成功や創造、才能、人と違うところなどが罰されるべきだと考えているからだ」と述べた。

 ドパルデューさんが仏富裕層の租税回避の移住先として知られるベルギー国境沿いの村ネシャン(Nechin)に住宅を購入したことが明らかになったことを受けてエロー首相は、「かなり情けないことだと思う」、「誰もが彼(ドパルデューさん)をアーティストとして愛している。だが納税は連帯と愛国心の行動だ」などと語っていた。

 ドパルデューさんの家があるネシャン村を含む自治体の首長を務めるダニエル・セネッサル(Daniel Senesael)氏は、AFPの取材に対し、16日朝にドパルデューさんから連絡があり、「ベルギーの旅券を取得し、社会保障を受けられるようにするためにはどうしたらよいかと相談があった」ことを明らかにした。(c)AFP