【11月13日 AFP】1969年の夏、英ロックバンド「ローリング・ストーンズ(Rolling Stones)」のリードボーカル、ミック・ジャガー(Mick Jagger)は反抗的な若者たちのシンボルだった。だが来月オークションに掛けられる米歌手マーシャ・ハント(Marsha Hunt)に宛てた秘密のラブレターの中では、ロシア人振付師バーツラフ・ニジンスキー(Vaslav Nijinsky)の日記を読み、英作家クリストファー・イシャーウッド(Christopher Isherwood)と会えることに心躍らせる繊細な一面を見せている。

 英競売大手サザビーズ(Sotheby's)のガブリエル・ヒートン(Gabriel Heaton)氏は「この(手紙の)中で私たちは、世界的スーパースターとしてのミック・ジャガーではなく、幅広い知的・芸術的な関心を持った詩的で自意識の強い25歳の青年としてのジャガーを見ることができる」と話している。「公のイメージとはまったく異なるジャガーの姿──情熱的だが自己完結的、叙情的ながら強い風刺的感覚を兼ね備えた貴重な姿を垣間見ることができる」

 ジャガーがラブレターを宛てたハントはミュージカル「ヘアー(Hair)」ロンドン(London)公演の「顔」として知られるモデル兼歌手のアフリカ系米国人で、ジャガーの第1子となった娘のカリス(Karis)さんを産み、ヒット曲「ブラウン・シュガー(Brown Sugar)」にインスピレーションも与えた人物だ。

 ラブレターはジャガーが出演映画『太陽の果てに青春を(Ned Kelly)』の撮影をしていたオーストラリアのさまざまな場所からロンドンのハントに送られたもので、文学や自分がいる場所の景色、最近のニュースや人付き合いについて書かれている。ロンドンのサザビーズで12月12日に競売に掛けられる予定で、計7万~10万ポンド(約880万~1260万円)での落札が予想されている。

 ハントは英紙ガーディアン(Guardian)に、ラブレターの売り上げはフランスにある自宅の修繕費用に使うと明かしつつ、これらの手紙が「歴史の一部」として評価されることを望むと語っている。

「これはミック自身の言葉です。英国史やロック史、文化史の一部であり、(これまで流れてきた)全ての間違った情報を訂正するものです」

「重要な競売です。私たちの世代が亡くなりつつある中、これらの手紙が誰かに買い取られ、私たちがどんな人間で、どんな人生を送ったかという現実が人々と共に生き続けることを願っています」(c)AFP