【1月15日 AFP】前週、ニューヨーク・フィルハーモニック(New York Philharmonic)のファンの携帯電話の着信音が、同楽団のコンサートにいくつかの音符を追加してしまった――これには誰も喜ばず、特に指揮者は立腹の様子だった。

 オーケストラがマーラーの交響曲第9番の静かなフィナーレを演奏中、最前列付近に座っていた男性のiPhoneが耳障りな音を鳴らした。マリンバの着信音だった。

 これに対し、指揮者のアラン・ギルバート(Alan Gilbert)氏は、異例にも演奏を止め、観客席に非難のまなざしを向けて叱責した。

「実際、その音はホールの中で一番うるさかった。どうにかしないといけなかった」とギルバート氏はテレビのインタビューに語った。

 着信音が鳴り続ける中、観客席からは「出ていけ」「追い出せ」などの叫び声が上がった。

 ギルバート氏は、普段ならコンサートを中断することはないが、着信音の音量とその長さに考え込まされたという。「オーケー、どうすればいい?この作品をどうやって終わらせればいいのか」

 着信音を鳴らしたのは60代の男性。音が鳴りやむまで、手に入れたばかりの最新機器にしばらく苦戦した。

 男性は、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に対し、自分の携帯電話から着信音が鳴っていると気づくまでにかなりの時間がかかったと述べた。前日に会社からiPhoneを支給されたばかりで、アラーム機能が設定されていたことを知らなかったという。

「その携帯を、自分が持っていたと気づくことがどれほど絶望的な気持ちか、想像できるでしょう。とてもみじめです。コンサートの観客やオーケストラのメンバーたちが許してくれることを願います。すべての観客に謝罪します」と、男性は語った。

 コンサート終了後、この出来事はさまざまな音楽関連のブログで話題になった。(c)AFP