【1月2日 AFP】2000~2009年までの10年間に発表されたロック&ポップ音楽アルバムから、3大音楽誌の米ローリング・ストーン(Rolling Stone)誌、米ビルボード(Billboard)誌、英NME誌によるベスト・アルバム選考を照らしあわせ、10作品を厳選してみた。

-レディオヘッド(Radiohead
『キッド A』(Kid A、2000)

[ローリング・ストーン誌「2000年代のアルバム・ベスト100」1位、米ビルボード誌「評論家の選ぶ2000年代のベスト・アルバム20」2位、英NME誌「2000年代のアルバム・ベスト100」14位]

 初期レディオヘッドを特徴づけていたギター中心のサウンドから一変、ジャズから現代音楽にわたる実験的な試みを取り入れた作品。従来のプロモーション方法を使わず、かつ前衛的な内容だったにもかかわらず、同バンド初の全米チャート1位に輝いた。発表当時のローリング・ストーン誌のインタビューでボーカルのトム・ヨーク(Thom Yorke)は「キッドAはこれまでの活動を消し去って、一から始めるようなものだ」と語った。同誌は「実験的で抽象的。複雑で恍惚(こうこつ)とするエレクトリック・サウンドの世界に根ざしている」と評した。

-ザ・ストロークス(The Strokes
「イズ・ディス・イット」(Is This It、2001)

[ローリング・ストーン誌ベスト100・2位、ビルボード誌ベスト20・3位、NME誌ベスト100・1位]

 ルー・リード(Lou Reed)やストゥージーズ(Stooges)、テレビジョン(Television)といったニューヨーク・インディーズの系譜を受け継ぎながら、湿っぽい地下のライブスペースから一躍スターダムに駆け上がった。米同時多発テロの直前、2001年夏に発表されたデビュー・アルバムには、巨大都市の興奮と不安が如実に表現されている。NME誌は「(タイトルの)『It』がこれでいいか、という問いかけだとすれば、本アルバムはギターサウンドがまれにしか生み出せない傑作で、過去20年間で最も個性的なデビュー・アルバムだ」と絶賛した。

-エミネム(Eminem
「ザ・マーシャル・マザーズ LP」(Marshall Mathers LP、2000)

[ローリング・ストーン誌ベスト100・7位、ビルボード誌による「過去10年で最高のアーティスト」]

 殺人幻想から自傷行為、ドラッグ中毒まで、怒れる白人ラッパー、エミネムが自身の内面の影の部分を聴く者に突きつけ、その創造性を不動のものにした記念碑的作品。エミネムのラップにはたびたびセレブ批判も登場し、実母も彼を中傷で訴えたほどだ。生々しくわいせつな歌詞への非難も多いが、エミネムに比肩しうるラッパーはほとんどいない。R&Bシンガーの大物アッシャー(Usher)やラッパーの50セント(50 Cent)らライバルを押さえてビルボード誌の「過去10年で最高のアーティスト」に選ばれた。

-ボブ・ディラン(Bob Dylan
「モダン・タイムズ」(Modern Times、2006)

[ローリング・ストーン誌ベスト100・8位]

 2001年発表の『ラヴ・アンド・セフト(Love and Theft)』 と並びこの10年で最も評価すべきアルバムに挙げられる1枚。2度と戻らない過去20年を振り返り、1人のカウボーイの心に響くつぶやきが、痛々しいほどのブルースと美しいフォークサウンドの完璧なハーモニーに乗って漂う。ローリング・ストーン誌の論評は--「一曲一曲が田舎から都市へと移り変わり、地方の風習が現代に道を譲ったアメリカの旅をたどりなおしている。機械化、戦争、不安定な国内経済、破られる約束、ひとつひとつ金と引き換えに売り渡される夢・・・全編を覆っているのは、危機に瀕するアメリカだ」

-アーケイド・ファイア(Arcade Fire
『フューネラル』(Funeral、2004)

[ローリング・ストーン誌ベスト100・6位、ビルボード誌ベスト20・1位、NME誌ベスト100・7位]

 「葬式」というタイトルとは裏腹に飛び出すのは、活気にあふれたストリングスやホーン、木琴などのユニークなカナダの大所帯バンド15人が奏でるサウンドだ。愛や喪失、はかない希望などを歌う詞に、重層的なコードが感情を揺さぶるように覆いかぶさる。世界中の音楽評論家から「真に独創的」との評価を受け、以降、スタイルを真似るバンドも後を絶たない。

-ジェイ・Z(Jay-Z
『ザ・ブループリント』(The Blueprint、2001)

[ローリング・ストーン誌ベスト100・4位、ビルボード誌ベスト20・6位、NME誌ベスト100・22位]

 史上最高のラップ・アルバムとの評もあるカリスマ、ジェイ・Zの代表作。ドアーズ(Doors)やジャクソン5(Jackson 5)などジャンルを越えた不朽の名曲からのボーカル・サンプリングを、ジェイ・Zの珠玉のテクニックでさらに高みに引き上げる。ローリング・ストーン誌によると本作は「使えば必ずうまくいく最高の曲の数々を素材として、この世で最高のラッパーを解き放った」

-エイミー・ワインハウス(Amy Winehouse
『バック・トゥ・ブラック』(Back To Black、2007)

[ローリング・ストーン誌ベスト100・19位、ビルボード誌ベスト20・5位、NME誌ベスト100・27位]

 60年代に流行したビーハイブヘアにハスキーボイスで強烈な個性を放つワインハウスは、本作でソウル・ミュージック界に劇的な復活を果たした。第50回グラミー賞(Grammy Awards)5部門での受賞はローリン・ヒル(Lauryn Hill)やビヨンセ(Beyonce)と並ぶ記録で、トップ女性アーティストに仲間入りした。ドラッグやアルコールの問題がついてまわり、2007年以降活動休止状態にあるのは惜しい。

-インシンク(N'SYNC
『ノー・ストリングス』(No Strings Attached、2000)

[ビルボード誌「2000年代のベストセラー・アルバム」1位]

 ジャスティン・ティンバーレイク(Justin Timberlake)が在籍し、5人組のボーカル・グループとして絶大な人気を誇ったインシンクの世界的ヒットとなった作品。ロック評論家には不評だったが全世界で1000万枚を売り上げ、この10年間で最高の記録となった。

-アークティック・モンキーズ(Arctic Monkeys
『ホワットエヴァー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット 』(Whatever People Say I am, That's What I'm Not、2006)

[ローリング・ストーン誌ベスト100・41位、NME誌ベスト100・4位、ビルボード誌ベスト20・15位]

 ビートルズ(The Beatles)からキンクス(The Kinks)、ザ・スミス(The Smiths )といった偉大なブリティッシュ・ロックの系譜をるつぼに投げ込み、万華鏡のようなカラフルさで爆発させるとアークティック・モンキーズのサウンドになる。重苦しいイングランド中部の工業地帯から羽ばたいた彼らは、この10年ならではの特徴、インターネットの力でスターになった初めてのバンドのひとつとも言える。若さと緊迫感にあふれたパンク・サウンドは、登場とともに十代の若者やポップ通をとらえた。

-ザ・ホワイト・ストライプス(the White Stripes
『エレファント』(Elephant、2003)

[ローリング・ストーン誌ベスト100・5位、ビルボード誌ベスト20・8位、NME誌ベスト100・18位]

 アメリカのロック・デュオのメジャー・デビュー・アルバム。ジャック&メグ・ホワイト(Jack and Meg White)によるミニマルなギターとドラムだけの編成で、一躍スターとなった。独音楽誌「Spex」のマックス・ダックス(Max Dax)編集長は、「ジャックとメグはほとんど2人だけの手で、パンクロックをどうでもよいものから救い上げた」と述べている。(c)AFP/Sam Reeves