【12月26日 AFP】米国人ベテラン歌手で女優のアーサ・キット(Eartha Kitt)さんが25日、結腸がんのため死去した。81歳だった。キットさんの友人で広報担当者のアンドリュー・フリードマン(Andrew Freedman)氏が同日、AFPに明らかにした。

 コネティカット(Connecticut)州に暮らしていたキットさんは、ニューヨーク長老派教会病院(New York Presbyterian Hospital)で治療を受けていた。情熱にあふれた官能的な歌声で人気を博し、およそ60年間にわたり国際的スターとして活躍した。

「彼女のまねをする人はたくさんいると思うが、彼女こそ本家本元だ」とフリードマン氏は語る。デイタイム・エミー賞(Daytime Emmy Awards)で2度の受賞を果たし、トニー賞(Tony Awards)で2回、グラミー賞(Grammy Awards)で2回ノミネートされている。

 ヒット曲「I Want to Be Evil」、「Santa Baby」は、現在でも人気のクリスマスソングだ。

 米国でヒットしたテレビシリーズ版『バットマン(Batman)』で、元祖キャットウーマン(Catwoman)を演じたことでも有名。自身を「セクシーな子猫(sex kitten)」と表現することもあった。猫なで声の神秘的なキャラクターで多くのファンを魅了し、米映画監督・俳優のオーソン・ウェルズ(Orson Welles)に「世界で最もエキサイティングな女性」と言わしめるほどだった。

 1958年の映画『セントルイス・ブルース(St. Louis Blues)』では歌手ナット・キング・コール(Nat King Cole)と共演を果たしている。

 ホワイトハウス(White House)での昼食会中にベトナム戦争に反対する発言をしたことで、1960年代後半は米国政府に要注意人物とされていた。

 数年間米国を離れて仕事をした後帰国し、1974年にブロードウェー(Broadway)の舞台に立つ。1978年には出演ミュージカル『ティンブクトゥ(Timbuktu)』で2度目のトニー賞ノミネートを果たした。

 2006年12月にはホワイトハウスを再び訪問。ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領、ローラ(Laura Bush)夫人と共に「ナショナル・クリスマスツリー(National Christmas Tree)」の点灯式に出席した。

 米サウスカロライナ(South Carolina)州生まれのキットさんは、10の言語で歌い、100か国以上の国でコンサートを行った。

 20歳でブレイクする前は、パリ(Paris)で振付師キャサリン・ダナム(Katherine Dunham)が主催するダンスカンパニーに在籍し、歌手・ダンサーとして世界ツアーに参加。着々とキャリアを積んでいた。初期には仏シャンソン歌手エディット・ピアフ(Edith Piaf)の「愛の讃歌(La Vie en Rose)」をカバーし、大ヒットさせた。

「パリは彼女の愛するの場所の1つだった」とフリードマン氏。「40、50年代以降、ヨーロッパ、特にパリは、キットにとって特別な場所になった。(c)AFP