米国のティーンを熱狂させる15歳のアイドル、マイリー・サイラス
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【4月29日 AFP】米国で放送中のドラマ「シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ(Hannah Montana)」の主人公を演じて人気を博している歌手のマイリー・サイラス(Miley Cyrus)。コンサートはチケットが売り切れ必至で、自叙伝発売の予定もあるが、墜ちたアイドル歌手ブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)や薬物中毒が取りざたされるリンジー・ローハン(Lindsay Lohan)のように、今後悪い方向に向かっていく可能性もあると専門家は警鐘を鳴らす。
■懸念の発端
世界中の少女たちが憧れるサイラスは27日、今週発売のバニティ・フェア(Vanity Fair)誌に扇情的な写真が掲載されたことをピープル(People)誌の電子版で「『芸術的』な写真になると聞いて参加しました。でも、掲載された写真とストーリーを見て、とても困惑しています」と謝罪した。問題となった芸術もどきの写真でサイラスは、シーツにくるまり、裸の背中を露わにして誘うようにカメラを見つめている。
この刺激的な写真が、サイラスのさわやかな優等生的イメージを損ない、子どもたちのお手本となるアイドルとしては失格だと、親世代からの不興を買うきっかけになるとの懸念が広がっているのだ。
今回の写真は、チケット完売が続出するコンサートツアーの大規模宣伝活動の一環として発表された。写真掲載と同時に、来年の自叙伝発売計画も発表されている。出版元のディズニー・ブック・グループ(Disney Book Group)によると、自叙伝は2009年春の出版予定。契約金はピープル誌によれば、百万ドル単位(日本円で億単位)と言われる。
自叙伝では、サイラスがトップアイドルになった経緯や、有名になってもなお、家族の支えによって地に足を着けた活動が続けられる理由などが語られる。サイラスは自叙伝について「世界中の子どもたちが夢を追いかけるきっかけになれば」と語る。
サイラスに熱狂的なファンができるきっかけとなった「ハンナ・モンタナ」は、ディズニー・チャンネル(Disney Channel)で放映されているドラマ。サイラス演じる平凡な高校生マイリー・スチュアート(Miley Stewart)が実は人気歌手という設定で、ディズニー史上、マーケティングキャンペーンが最も成功した作品と言われる。6歳から14歳までの子どもたち数百万人が毎週かかさず見ているのだ。
■「誰もがスターになれる」という幻想を利用
南カリフォルニア大学(University of Southern California、USC)の社会学者カレン・スターンハイマー(Karen Sternheimer)教授は語る。「『誰もがスターになれる』という幻想を、実にうまく利用した現象だ。『ハンナ・モンタナ』を見ていると、リアリティ番組を見ている錯覚に陥る。ハンナは平凡な少女なのに、夢のような世界に生きている。幻想を極めて巧みに売り物にしている」
スターンハイマー教授はさらに、サイラスとその優等生的イメージは、「子どもたちはもちろん、その親たちにとっても最も望ましいかたちに作り上げられた若いスター」の最新像なのだと指摘する。
「人々はそうした優等生なアイドルを生み出し、彼女たちがその理想像に反することをすれば中傷する」とスターンハイマー教授は語り、薬物や飲酒でお騒がせのブリトニーやローハン、ニコロデオン(Nickelodeon)の人気シリーズ『Zoey 101』で大人気となり、最近になって妊娠を発表したブリトニーの妹ジェイミー・リン・スピアーズ(Jamie Lynn Spears)に言及した。
ディズニーは、茶色の髪と青い目のハンナことサイラスをモチーフにした人形、ベッドシーツ、衣服、スクールバッグ、テレビゲームなどを発売した。ドラマで歌われた歌もファンの購買欲を刺激。アルバムの売上げ枚数は800万枚を記録し、2007年に行われたコンサートツアーのチケットは数分で完売し、裏で高額で取引された。
チケットを入手できなかったファンのために、ディズニーはコンサート映像を収めたビデオを発売、3日間で3100万ドル(約32億円)の売り上げを達成した。サイラスはさらに、数億人がテレビ放送を視聴した2月24日の第80回アカデミー賞(80th Academy Awards)授賞式ではプレゼンターを務めた。
「彼女はディズニーにとって、金のなる大木だ」と語るのは南カリフォルニア大学で音楽産業を研究するジェリー・デル・コリアーノ(Jerry Del Colliano)氏。「いまのディズニーに匹敵できる企業はない。若年層はディズニーの得意分野だ。若年層にアピールできるケーブルテレビやラジオといった媒体に強いからだ」
■親を巻き込んだ熱狂
デル・コリアーノ氏によれば、「トゥイーンズ(Tweens)」と呼ばれる11-12歳の子どもたちを対象にした市場は、とりわけ実入りのよい市場だという。「トゥイーンズは親の金でモノを購入する。おもしろいことに、親はそれを当然のことと考えており、1000ドル(約10万円)以上もするチケットを子どものために買おうとする。この形こそまさにディズニーの理想。子どもだけでなく、お金を出す親も同時に、熱狂に巻き込んでいる。親は純粋な何かにお金を使っていると思うから、喜んでもっとお金を出そうと考える」
サイラスは自叙伝で「自分にとって家族とのきずながどれほど重要か」を書きたい、それによって、「世の中の母娘が一生にわたる思い出を作るきっかけになれば」と語っている。しかし、デル・コリアーノ氏は、彼女がディズニーのお気に入りであり続けるためには、若く、かわいらしく、完ぺきないまの状態を維持しなければならないとも指摘する。
「スターはみな使い捨てだ。だが企業側もある種のリスクは冒している。若いアイドルが大スターになると、不品行な振る舞いをする可能性があるからだ。だから企業は、少なくとも親たちに対しては、若いアイドルのピュアなイメージを維持したいと考える」
スターンハイマー教授は締めくくりにこう語った。若いアイドルが「現実的な問題を抱えたリアルな人間になると、人々は『魔法がとけてしまった』と言い出す。ディズニー式に言うなら、お姫様になるはずが、魔女になってしまった、ということだ」(c)AFP/Tangi Quemener
■懸念の発端
世界中の少女たちが憧れるサイラスは27日、今週発売のバニティ・フェア(Vanity Fair)誌に扇情的な写真が掲載されたことをピープル(People)誌の電子版で「『芸術的』な写真になると聞いて参加しました。でも、掲載された写真とストーリーを見て、とても困惑しています」と謝罪した。問題となった芸術もどきの写真でサイラスは、シーツにくるまり、裸の背中を露わにして誘うようにカメラを見つめている。
この刺激的な写真が、サイラスのさわやかな優等生的イメージを損ない、子どもたちのお手本となるアイドルとしては失格だと、親世代からの不興を買うきっかけになるとの懸念が広がっているのだ。
今回の写真は、チケット完売が続出するコンサートツアーの大規模宣伝活動の一環として発表された。写真掲載と同時に、来年の自叙伝発売計画も発表されている。出版元のディズニー・ブック・グループ(Disney Book Group)によると、自叙伝は2009年春の出版予定。契約金はピープル誌によれば、百万ドル単位(日本円で億単位)と言われる。
自叙伝では、サイラスがトップアイドルになった経緯や、有名になってもなお、家族の支えによって地に足を着けた活動が続けられる理由などが語られる。サイラスは自叙伝について「世界中の子どもたちが夢を追いかけるきっかけになれば」と語る。
サイラスに熱狂的なファンができるきっかけとなった「ハンナ・モンタナ」は、ディズニー・チャンネル(Disney Channel)で放映されているドラマ。サイラス演じる平凡な高校生マイリー・スチュアート(Miley Stewart)が実は人気歌手という設定で、ディズニー史上、マーケティングキャンペーンが最も成功した作品と言われる。6歳から14歳までの子どもたち数百万人が毎週かかさず見ているのだ。
■「誰もがスターになれる」という幻想を利用
南カリフォルニア大学(University of Southern California、USC)の社会学者カレン・スターンハイマー(Karen Sternheimer)教授は語る。「『誰もがスターになれる』という幻想を、実にうまく利用した現象だ。『ハンナ・モンタナ』を見ていると、リアリティ番組を見ている錯覚に陥る。ハンナは平凡な少女なのに、夢のような世界に生きている。幻想を極めて巧みに売り物にしている」
スターンハイマー教授はさらに、サイラスとその優等生的イメージは、「子どもたちはもちろん、その親たちにとっても最も望ましいかたちに作り上げられた若いスター」の最新像なのだと指摘する。
「人々はそうした優等生なアイドルを生み出し、彼女たちがその理想像に反することをすれば中傷する」とスターンハイマー教授は語り、薬物や飲酒でお騒がせのブリトニーやローハン、ニコロデオン(Nickelodeon)の人気シリーズ『Zoey 101』で大人気となり、最近になって妊娠を発表したブリトニーの妹ジェイミー・リン・スピアーズ(Jamie Lynn Spears)に言及した。
ディズニーは、茶色の髪と青い目のハンナことサイラスをモチーフにした人形、ベッドシーツ、衣服、スクールバッグ、テレビゲームなどを発売した。ドラマで歌われた歌もファンの購買欲を刺激。アルバムの売上げ枚数は800万枚を記録し、2007年に行われたコンサートツアーのチケットは数分で完売し、裏で高額で取引された。
チケットを入手できなかったファンのために、ディズニーはコンサート映像を収めたビデオを発売、3日間で3100万ドル(約32億円)の売り上げを達成した。サイラスはさらに、数億人がテレビ放送を視聴した2月24日の第80回アカデミー賞(80th Academy Awards)授賞式ではプレゼンターを務めた。
「彼女はディズニーにとって、金のなる大木だ」と語るのは南カリフォルニア大学で音楽産業を研究するジェリー・デル・コリアーノ(Jerry Del Colliano)氏。「いまのディズニーに匹敵できる企業はない。若年層はディズニーの得意分野だ。若年層にアピールできるケーブルテレビやラジオといった媒体に強いからだ」
■親を巻き込んだ熱狂
デル・コリアーノ氏によれば、「トゥイーンズ(Tweens)」と呼ばれる11-12歳の子どもたちを対象にした市場は、とりわけ実入りのよい市場だという。「トゥイーンズは親の金でモノを購入する。おもしろいことに、親はそれを当然のことと考えており、1000ドル(約10万円)以上もするチケットを子どものために買おうとする。この形こそまさにディズニーの理想。子どもだけでなく、お金を出す親も同時に、熱狂に巻き込んでいる。親は純粋な何かにお金を使っていると思うから、喜んでもっとお金を出そうと考える」
サイラスは自叙伝で「自分にとって家族とのきずながどれほど重要か」を書きたい、それによって、「世の中の母娘が一生にわたる思い出を作るきっかけになれば」と語っている。しかし、デル・コリアーノ氏は、彼女がディズニーのお気に入りであり続けるためには、若く、かわいらしく、完ぺきないまの状態を維持しなければならないとも指摘する。
「スターはみな使い捨てだ。だが企業側もある種のリスクは冒している。若いアイドルが大スターになると、不品行な振る舞いをする可能性があるからだ。だから企業は、少なくとも親たちに対しては、若いアイドルのピュアなイメージを維持したいと考える」
スターンハイマー教授は締めくくりにこう語った。若いアイドルが「現実的な問題を抱えたリアルな人間になると、人々は『魔法がとけてしまった』と言い出す。ディズニー式に言うなら、お姫様になるはずが、魔女になってしまった、ということだ」(c)AFP/Tangi Quemener