【6月11日 AFP】人気デュオ「ワム!(Wham!)」の元メンバーで英ポップ歌手のジョージ・マイケル(George Michael、43)が9日、改築されたウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)でこけら落とし公演を行った。

 マイケルは前日8日、ブレント(Brent)の下級裁判所で開かれた裁判に出廷。2006年10月、薬物服用後に車を運転したことを認め、2年間の運転免許停止と、100時間の奉仕活動を言い渡されていた。

 しかし、ファンは彼を見捨てなかったようだ。

■ヒット曲の数々を披露

「生涯最大の公演の準備のため『休暇』を取っていた」と語るマイケルは、ウェンブリー・スタジアムでファンの大声援に迎えられた。黒いTシャツにズボン、ジャケットにトレードマークのサングラスを身につけ、最初にシングル『Fastlove』(1996年)を披露した。

 3曲目の『Father Figure』を前にマイケルは叫んだ。

「ウェンブリーに集まってくれたみんな!おれはこんな素晴らしいステージに立っている。信じられない気分だ。これまでの25年間、神とすべての人々に感謝する」

 トニー・ブレア(Tony Blair)英首相とジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領の親密な関係を歌った『Shoot the Dog』の場面では、ブッシュ大統領をかたどった巨大な風船が英国のブルドッグを引き連れて登場した。

 コンサート後半はテレビで生中継された。

 マイケルはファンを見つめ、薬物使用と同性愛者のセックスの件で自身を追い回した英国のマスコミを辛らつに批判した。判決が確定した現在、訴訟から解放されたマイケルは自由に物事を語れるようになったようだ。

 その後『Freedom! 90』、『Faith』、『I’m Your Man』、アンコールの『Careless Whisper』などが披露され、会場は熱気に包まれた。

■コンサートの音もクリアに、生まれ変わったウェンブリー・スタジアム

 工事の遅れや予算問題などで完成が遅れたウェンブリー・スタジアムだが、いまや座席数9万を擁し、ヨーロッパ第2の規模を誇るスタジアムとなっている。2000年に閉鎖され2003年に取り壊された旧スタジアムと異なり、新スタジアムはコンサートなどの公演に配慮して、大きく、鋭く、クリアに音が響き渡るよう設計されている。

 同スタジアムは、1923年に完成したエンパイア・スタジアム(Empire Stadium)のレイアウトを受け継いでおり、全体が細長い形状となっている。ステージの往復距離が長過ぎるため、ソロ公演を行うアーティスト泣かせの会場ともいえる。 

 パフォーマンスに長けたマイケルは、陽気なテンポの曲で会場を見事に盛り上げた。しかし、スローナンバーでは会場が少し静かだったように思われた。

 マイケルはウェンブリー・スタジアムを知らないアーティストではない。「アフリカ難民救済」を目的とした「Live Aid」(1985年)、フレディ・マーキュリー(Freddie Mercury)とのトリビュート・コンサート(1992年)、南アフリカ前大統領ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)氏にささげるコンサート(1998年)、そしてワムの解散コンサート(1986年)など、この会場で数々の公演を行ってきた。

 今回のヨーロッパ周遊ツアー「25 Live」は、5月12日のポルトガル公演から始まった。10日(現地時間)、ウェンブリー・スタジアムで2日目の公演を行った後で英国各地を回り、7月26日のアテネ公演で終了予定。

■ビッグスターの公演が目白押し

 ウェンブリー・スタジアムでは今後、6月16日、17日に英ロックバンドのミューズ(Muse)、7月1日にはダイアナ妃(Princess Diana)没後10周年を記念した追悼コンサート「コンサート・フォー・ダイアナ(Concert for Diana)」などが予定されている。

 また、7月7日には温暖化問題をテーマにした巨大ライブ・フェステバル「Live Earth」が行われる予定。世界7大陸で24時間にわたり同時開催されるこのコンサートには、マドンナ(Madonna)やレッド・ホット・チリペッパーズ(Red Hot Chili Peppers)が出演する。

 翌8日には米国のへヴィーメタル・バンド、メタリカ(Metallica)の公演も予定されている。(c)AFP/Robin Millard