【9月6日 AFP】16年前に自動車事故で死亡したダイアナ元英皇太子妃(Princess Diana)の伝記映画『ダイアナ(Diana)』が5日、ロンドン(London)でワールドプレミアを迎えた。しかし、上映から数時間足らずで英メディアの辛辣な批評にさらされることとなった。

 英国出身の女優ナオミ・ワッツ(Naomi Watts)が元妃を演じる『ダイアナ』は、元妃とロンドン在住のパキスタン人外科医、ハスナト・カーン(Hasnat Khan)氏との恋愛を追った内容が既に物議を醸しており、ワッツは上映に先立って主演を引き受けたことを正当化する発言をしていた。

■「いたたまれない脚本」「元妃が気の毒」

 ワールドプレミアの華やかなお祝いモードは上映から間もなく、英メディアが相次いで掲載した無慈悲な批評によって打ち砕かれてしまった。

 英紙タイムズ(Times)は、「身もだえするほどいたたまれない脚本をものともせず、精一杯の演技を見せた」と主演のワッツを称賛した一方、映画そのものについては「残酷で押し付けがましい」と酷評。

 英紙ガーディアン(Guardian)の評論家、ピーター・ブラッドショー(Peter Bradshaw)氏は、「ダイアナ元妃が気の毒だ」と嘆いた。「『カークラッシュ映画』と評するのはためらわれるが、恐ろしいことにそれが真実だ。1997年に起きた悲惨な事故から16年が経過し、ダイアナ元妃に再び恐ろしい死が訪れた」

 英紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)の評価は星2つでガーディアン、タイムズ両紙より1つ多かったが、評論の中身はやはり辛口だった。評論家デービス・グリットン(Davis Gritten)氏は、「何を描きたいんだ?」と疑問を呈した。

■ドディ氏との交際は当てつけだった?

 映画の原作は、2001年に出版されたケイト・スネル(Kate Snell)著「Diana: Her Last Love(仮訳:ダイアナ、最後の愛)」。96年にチャールズ皇太子と離婚したダイアナ元妃はその翌年、仏パリ(Paris)で自動車事故に遭い、同乗していたドディ・アルファイド(Dodi Fayed)氏ともども帰らぬ人となった。元妃の友人の多くは、ドディ氏が元妃の本命の恋人だったと話している。

 ところが、映画では元妃がドディ氏と交際し始めたのは、カーン医師を嫉妬させるためだったと示唆している。この点について、元妃と親しかった人々は異議を唱えている。

 映画の内容に元妃の2人の息子、ウィリアム王子(Princes William)とヘンリー王子(Princes Harry)は心情を害するのではないかと英BBCテレビに問われたワッツは、「映画を見れば、私たちが敬意を持ち、細部まで気を遣いつつ作品を完成させたと感じてもらえるだろう」と話していた。

 一方で4日には、ワッツがBBCラジオのインタビュー中に突然その場を立ち去るハプニングも発生。司会者のサイモン・マヨ(Simon Mayo)氏は驚きとともに「質問がちょっと気に食わなかったようだ」とマイクロブログのツイッター(Twitter)に投稿している。

 映画について、英国王室は一切コメントを出してはいない。

 現在も英国で医師を続けているカーン氏は、映画は「全くのウソ」で見る気はないと語っている。(c)AFP/Guy JACKSON