【2月25日 AFP】第85回アカデミー賞(Academy Awards)授賞式が24日、米ハリウッド(Hollywood)で開催され、『リンカーン(Lincoln)』で奴隷制度廃止を目指し苦悩する米国の第16代大統領エーブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln)を演じたダニエル・デイ・ルイス(Daniel Day-Lewis)が主演男優賞を受賞した。

 同部門にはその他、『世界にひとつのプレイブック(Silver Linings Playbook)』のブラッドリー・クーパー(Bradley Cooper)、『レ・ミゼラブル(Les Miserables)』のヒュー・ジャックマン(Hugh Jackman)、『ザ・マスター(The Master)』のホアキン・フェニックス(Joaquin Phoenix)、『フライト(Flight)』のデンゼル・ワシントン(Denzel Washington)がノミネートされていた。

■演じる役へのこだわりと綿密なリサーチ

 自身3度目となる主演男優賞を受賞したルイス。その演技の幅とディテールにもこだわる神経の細やかさにおいて、この時代の最も優れた俳優の一人であることを証明して見せた。

 自身初となるアカデミー主演男優賞を受賞した『マイ・レフトフット(My Left Foot)』(1989年)での脳性小児麻痺を患う不遇の主人公を演じたルイスの演技と、このたびの受賞作品『リンカーン』での熱演には通じるものが見られた。

 演じる役に対する選択眼および集中的なリサーチで知られるルイスは、2007年の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(There Will Be Blood)』で2度目のオスカーを受賞している。過去10年間で4本の映画にしか出演していないルイスだが、各作品での役作りはまさに伝説的だ。

 1957年に生まれたルイスは、13歳で学校を辞め、『日曜日は別れの時(Sunday, Bloody Sunday)』で端役デビューした。この時は名前すらクレジットされなかったが、以降、オールド・ビック演劇学校(Bristol Old Vic)やロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(Royal Shakespeare Company)で演技を学び、役者の道を進み続けた。

 ルイスが名声をものにしたのは1985年公開の『マイ・ビューティフル・ランドレット(My Beautiful Laundrette)』と『眺めのいい部屋(A Room with a View)』の2作品。1987年公開のフィリップ・カウフマン(Philip Kaufman)監督作品『存在の耐えられない軽さ(The Unbearable Lightness of Being)』では初めて主役を演じている。

 ルイスは1997年の『ボクサー(The Boxer)』を最後に数年間、俳優業を休業して表舞台から姿を消した。一説によるとイタリアで靴職人から靴づくりの技術を習得していたとされるが、真相は明らかになっていない。本人もこのことには触れたがらないようで、「この時期の出来事については話したくないことがある」とコメントしたこともある。

 しかし、2002年にはマーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)監督の『ギャング・オブ・ニューヨーク(Gangs of New York)』に出演し、3度目となる主演男優賞にノミネートされている。(c)AFP