【2月24日 AFP】25日(現地時間24日)に発表される第85回アカデミー賞(Academy Awards)の賞レースは、作品賞でベン・アフレック(Ben Affleck)監督の『アルゴ(Argo)』がスティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)監督の『リンカーン(Lincoln)』を頭一つ抜いている感があるが、近年の同賞では最も予想のつかない争いとなっている。

■行方読めない激戦、作品賞&監督賞

『アルゴ』は、1979年の在イラン米大使館人質事件を題材にした救出劇で、今シーズンのハリウッドの映画賞を総ナメにしている。一方、スピルバーグ監督にとって94年の『シンドラーのリスト(Schindler's List)』以来の作品賞ノミネートとなった『リンカーン』は、今回のアカデミー賞で最多の12部門にノミネートされている。

 スピルバーグ監督は、アフレック監督がノミネートされていない監督賞でも最有力候補に挙がっている。しかし、この監督賞でも、カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で最高賞パルム・ドール(Palm d’Or)に輝いた『愛、アムール(Amour)』のミヒャエル・ハネケ(Michael Haneke)監督を筆頭に、『世界にひとつのプレイブック(Silver Linings Playbook)』のデヴィッド・O・ラッセル(David O. Russell)監督や『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日(Life of Pi)』のアン・リー(Ang Lee)監督によるどんでん返しが待っているかもしれない。

■主演男優賞はほぼ確実? 他の俳優部門は接戦

 一つ受賞はほぼ確実とみられているのが、『リンカーン』でアメリカ合衆国第16代大統領エーブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln)を演じたダニエル・デイ・ルイス(Daniel Day-Lewis)の主演男優賞だ。受賞すれば、『マイ・レフトフット(My Left Foot)』(90年)、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(There Will Be Blood)』(08年)に続く3度目のオスカーとなる。

 主演女優賞の最有力候補は、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の最高指導者だったウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者の追跡劇『ゼロ・ダーク・サーティ(Zero Dark Thirty)』で、米中央情報局(CIA)情報員を演じたジェシカ・チャステイン(Jessica Chastain)。しかし『世界にひとつのプレイブック』のジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawrence)への期待も高まっている。

 助演女優賞は、作品賞にもノミネートされている『レ・ミゼラブル(Les Miserables)』のアン・ハサウェイ(Anne Hathaway)が依然トップを走っているが、他の賞よりもオープンな展開となっている。

 最も予想しにくいのが助演男優賞で、『世界にひとつのプレイブック』でブラッドリー・クーパー(Bradley Cooper)の父親を演じるベテラン俳優ロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro)との呼び声が高いが、クエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino)監督の『ジャンゴ 繋がれざる者(Django Unchained)』で黒人奴隷に自由を与える白人の賞金稼ぎを演じたクリストフ・ヴァルツ(Christoph Waltz)や『リンカーン』で奴隷制廃止を訴えた共和党下院議員を演じたトミー・リー・ジョーンズ(Tommy Lee Jones)が強力なライバルとして立ちはだかる。

 外国語映画賞の筆頭候補は、迫り寄る肉体と精神の病に向き合う老夫婦を描き、昨年のカンヌ映画祭最高賞を受賞した『愛、アムール』だ。この映画で妻を演じたフランス人女優エマニュエル・リヴァ(Emmanuelle Riva)は主演女優賞に波乱を起こす可能性もある。実現すれば、英語以外の言語でオスカーを獲得する史上6人目の俳優となる。(c)AFP/Michael Thurston