【2月20日 AFP】24日に授賞式を控える第85回アカデミー賞(Academy Awards)で、オスカー史上最年少の少女が主演女優賞にノミネートされている──『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~(Beasts of the Southern Wild)』のクヮヴェンジャネ・ウォレス(Quvenzhane Wallis)だ。同作品のオーディションを受けた際、ウォレスは年齢を1歳偽っていたという。

 ウォレスは5歳のときに年齢をごまかして6歳以上限定のオーディションを受けた。その小さな嘘を信じてテストを受けさせた製作陣は演技に圧倒され、4000人の応募者の中から主役の座を与えた。

■あふれ出るカリスマ性

『ハッシュパピー ~』はすでに2012年仏カンヌ映画祭(Cannes Film Festival)で栄誉あるカメラ・ドール(Camera d'Or、新人監督賞)を、米サンダンス映画祭(Sundance Film Festival)ではグランプリ(審査員大賞)を受賞している。

 ベン・ザイトリン(Benh Zeitlin)監督はオーディションをこう振り返る。「見れば明らかだった──6歳にしてあのような才能の持ち主に会えることなんてめったにない。生まれつきのカリスマ性、集中力、激しさ、賢さ、気高さがあった──あんなに小さな体、あんなに幼い心から(そうしたものが)出てくるとは、もはや尋常ではない。けれどもそれらは心にまっすぐやって来る。この映画の真実を解き明かすのは彼女の視点だ」

 1月の主演女優賞候補発表では、ウォレスの他にジェシカ・チャステイン(Jessica Chastain)、ジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawrence)、ナオミ・ワッツ(Naomi Watts)、そしてウォレスと対照的にオスカー史上最高齢の主演女優賞候補となったエマニュエル・リヴァ(Emmanuelle Riva)といったそうそうたる顔ぶれがノミネートされた。

 ウォレスのカリスマ性については、同作品がアカデミー作品賞を含め4部門でノミネートされる以前から、ここ数か月のプロモーション向けインタビューからも見て取れる。米人気トークショーに出演した際には、司会者のジェイ・レノ(Jay Leno)に、「部屋でうとうとしていました。表では何も反応しませんでしたが、内心、とんぼ返りとかしている感じでした」と目が覚めたらノミネートされていたエピソードを明らかにした。

 ウォレスが演じているのは、地球温暖化による水没の脅威にさらされたルイジアナ州の湿地帯(バイユー)のコミュニティに、短気で病気を患う父ウィンクと暮らす少女ハッシュパピーだ。実はこの設定、ウォレスの実際の出身地ともごく近いという。ウォレスは2003年8月28日、同じルイジアナ州のホーマ(Houma)で生まれた。ファーストネームの「ジャネ」はスワヒリ語で「妖精」を意味する。

■オーディション規定を無視して手に入れた役

 初めての演技の仕事は、製作側のオーディション規定を無視したからこそ手にした。そのこと自体がおそらくウォレスが演じるよう依頼された役にかなった行動だっただろう。「(オーディションは)6歳から9歳だからダメだってママに言われました。私はまだ5歳だからって。けど、とにかく行ってみて、ただ演じてみました。何も悪いことはしていません。役のハッシュパピーは正しいことをして、恐れない。それが私がオーディションでしたことです」

 これまで主演女優賞にノミネートされた史上最年少記録は、2003年にニュージーランド映画「クジラの島の少女(Whale Rider)」でノミネートされたケイシャ・キャッスルヒューズ(Keisha Castle-Hughes)で、ウォレスよりも4歳上の当時13歳だった。アカデミー賞主演女優賞を実際に受賞した最年少は1986年の『愛は静けさの中に(Children of a Lesser God)』のマーリー・マトリン(Marlee Matlin)で、21歳と218日での受賞だった。(c)AFP/Michael Thurston