【5月22日 AFP】インド・ムンバイ(Mumbai)出身の英国人作家サルマン・ラシュディ(Salman Rushdie)氏の代表作の1つ『真夜中の子供たち(Midnight's Children)』の映画化が極秘裏に進められており、スリランカで撮影が終了した。

 ラシュディ氏は1989年、『悪魔の詩(The Satanic Verses)』でイランの故ルホラ・ホメイニ(Ruhollah Khomeini)師から死刑宣告を受け、その後は警察の保護のもと潜伏生活を送っている。

 映画を監督するのは、カナダのディーパ・メータ(Deepa Mehta)氏。自らも、レズビアン描写に対し、母国インドでヒンズー教強硬派から非難を受けている。

 メータ氏は、宗教原理主義者らとの衝突を避けるため、小説の舞台であるインドやパキスタンではなく、スリランカで撮影を行ってきた。

■映画製作にイラン抗議

 極秘裏に進められた映画製作は、制作スタッフやキャストに秘密保持契約を義務付けたものの外部に漏れ、イランが知った際には製作が頓挫しかけた。

 国際的に孤立するスリランカにとって、イランは関係の深い国。イラン政府からの抗議を受け、スリランカ政府は映画撮影の承認を取り消してしまった。撮影開始から数日しか経っていないときだった。

 メータ氏は、スリランカのマヒンダ・ラジャパクサ(Mahinda Rajapakse)大統領に直訴し、映画撮影を続けられることになったという。

 製作の調整役を担ったスリランカの映画製作会社「フィルムチーム(The Film Team)」は、AFPの取材に、イランからの抗議はあったものの、撮影が前週末に無事終了したことを語った。同社責任者のDivraj Perera氏は「問題になるのを避けるために多大な労力を払ったが、結局イランに見つけられてしまった」と述べた。

■インド独立前後を描く物語

『真夜中の子供たち』は1981年のブッカー賞(Man Booker Prize)を受賞した名作。インド独立の日、1947年8月15日の午前0時に誕生した「サリーム・シナイ(Saleem Sinai)」の目を通して、インドの独立前後を描く作品だ。1993年の同賞25周年記念「ブッカー・オブ・ブッカーズ(Booker of Bookers)」も受賞した。

 だが、プロットが複雑で登場人物や舞台が非常に多いことから映画化はほぼ不可能と言われてきた。5部構成のテレビ用脚本も作られたが、番組が実現することはなかった。

 映画は英語版、ヒンズー語版、ウルドゥー語版が製作されている。英語圏では『Winds of Change』との題名で、2012年上半期に上映される予定で、カナダや英国、フランスや日本などでの上映が予定されている。

 脚本もラシュディ氏が自ら執筆し、配役にも携わった。メータ氏の監督作品『WATER(ウォーター)』にも出演したシーマ・ビシュワース(Seema Biswas)や、ラーフル・ボース(Rahul Bose)、Shahana Goswamiらが参加している。サリーム・シナイ役を演じるのは、新人のサティヤ・バーバー(Satya Bhabha)だ。(c)AFP/Mel Gunasekera