【5月20日 AFP】第64回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)の事務局は19日、ヒトラー(Adolf Hitler)に共感すると発言したデンマークのラース・フォン・トリアー(Lars Von Trier)監督(55)を「好ましからざる人物」として映画祭から追放すると発表した。

 しかし、コンペティション部門に出品されているトリアー監督の作品『メランコリア(Melancholia)』を審査から除外することはないという。

■ヒトラー擁護の発言

 トリアー監督は、18日に行われた『メランコリア』の記者会見で、ドイツ人の血を引いていることについて質問された際、笑顔でヒトラーに「少しだけ」共感すると答えた。監督は、息を引き取る間際の母親から父親が本当はドイツ人だということを聞かされたという。

「本当はユダヤ人になりたかったのに、実はナチスだった」

「私はヒトラーを理解する。彼は確かに悪いことをしたが、私には地下室に追い込まれた彼が理解できる」

 この発言が世界で報じられると、トリアー監督は謝罪し、「私は反ユダヤ主義でもないし、人種差別主義者でもなければ、ナチスでもない」とコメントを出した。

 しかし、映画祭事務局側は19日、トリアー監督の発言は「受け入れがたく、耐え難い。人間性や寛容性の理念に反している」として、監督を直ちに事実上の追放処分とする声明を出した。

『メランコリア』のプロデューサー、ミタ・ルイーズ・フォルデイガー(Meta Louise Foldager)によれば、トリアー監督は「事務局のどんな処罰も受け入れるし、理解している」という。

■周囲の反応

 同作品の南米での配給を一部担っているアルゼンチンの配給会社は、ツイッター(Twitter)で映画の公開を中止すると発表し、監督の発言から距離を取る姿勢を示した。フォルデイガーによれば、その他に配給を見合わせる国があるのかどうかは分かっていないが、イスラエルにも同作品は販売されたという。

 同映画祭の運営費2000万ユーロ(約23億円)の一部を負担している仏文化・通信省のフレデリック・ミッテラン(Frederic Mitterrand)大臣は、監督の発言を「恥ずべき」ものだと非難した。

 ブラックユーモアや不適切な発言で知られるトリアー監督だが、映画監督としては欧州を代表する人物のひとりで、2000年の同映画祭では『ダンサー・イン・ザ・ダーク(Dancer in the Dark)』でパルム・ドール(Palme d'Or)を獲得している。(c)AFP/Robert MacPherson

【動画】トリアー監督がヒトラー擁護発言をした記者会見(YouTube/AFPBB News公式チャンネル)