【12月9日 AFP】銀幕に『白雪姫(Snow White and The Seven Dwarfs)』が登場してから72年。ディズニー(Disney)お得意のおとぎ話の王族たちに、世界中の少女たちを喜ばせる新たな一員が加わる。

 しかし、その主人公、『プリンセスと魔法のキス(The Princess And The Frog)』のティアナ(Tiana)は、上層階級の先輩たちとは違っている。ディズニーの輝かしい歴史の中で初めて、アフリカ系米国人がプリンセスになるのだ。

 ティアナの声を担当した女優アニカ・ノニ・ローズ(Anika Noni Rose)は、本作はそれぞれの年代で異なる意味を持つという。

「私のおいにとっては何でもないこと。何とも思わないし、彼にとっては初めてのプリンセスになる」

「母にとっては、待ち望んでいたこと。そして祖母にとっては、生きている間に起こるなんて考えもしなかったことだ」

■オバマ大統領の当選に触発?

 ティアナの出現は、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領の当選と関連付けられている。しかし製作側は、本作の企画はオバマ大統領の当選前から始まっていたと主張している。

 ティアナの父親の声を担当した俳優テレンス・ハワード(Terrence Howard)は指摘した。

「幸せな偶然だよ。しかし、すべての文化や人種に天才がいるように、すべての文化や人種に階級はある。ディズニーがそんな表現をするのは良いことだと思う」

 舞台は1920年代のニューオーリンズ(New Orleans)。自分のレストランをオープンさせる夢を追うティアナが、カエルにされてしまった王子と恋に落ちるというストーリー。

■作品には賛否両論

 本作がアフリカ系米国人の感情を害することのないよう、ディズニーは個人や団体と話し合ったと伝えられているが、一部からは映画に対する批判も出ている。

 米紙シャーロットオブザーバー(Charlotte Observer)のコラムニスト、ウィリアム・ブラックバーン(William Blackburn)氏は、2005年にハリケーン・カトリーナ(Hurricane Katrina)に襲われ黒人社会が大きな被害を受けたニューオーリンズを舞台にしたことを非難した。

 しかし一方で、作品を称賛する人もいる。シカゴ(Chicago)出身で英国を拠点に活動する脚本家のボニー・グリア(Bonnie Greer)氏は英BBCのインタビューで次のように語った。

「子どものころはディズニーからこんな作品が出てくるとは思いもしなかった。素晴らしいこと」

「子どものころに見せられたものは影響力を持つ。私は幼いころ、黒人の人形では遊びたくなかったことを覚えている」

「白人の少女とともに黒人の少女も笑顔を浮かべるだろう」

 本作は米国では11日から、日本では2010年3月6日から公開される。(c)AFP/Paula Bustamante