【9月7日 AFP】(一部更新)米ドキュメンタリー映画監督マイケル・ムーア(Michael Moore)が容赦なく資本主義を批判した映画『Capitalism: A Love Story』が6日、第66回ベネチア国際映画祭(Venice International Film Festival)で上映された。いつものように痛烈なユーモアで溢れているが人々を鼓舞する部分は少ない作品に仕上がっている。

 患者に催眠術をかける催眠術師のモノクロの映像を用い、ムーア監督は米国民は洗脳され、資本主義は「神の定めに釣り合うもの」だと信じていると断言する。

「聖書でキリストが資本主義を受け入れた部分を見過ごしてしまったに違いない」ムーア監督がこう語ると、フランコ・ゼフィレッリ(Franco Zeffirelli)監督の映画『ナザレのイエス(Jesus of Nazareth)』の映像が流れるが、キリストの言葉が投資のアドバイスへと変わっている。

 ムーア監督はいくぶんまじめな調子で、富裕層の税率が90%で国民に4週間の休みがあり、年金が聖域だったレーガノミックス以前の社会を思い起こさせる。

 そしてロナルド・レーガン(Ronald Reagan)元米大統領の登場だ。B級映画でレーガン元大統領は「すぐに変えられるよ」と話すと、女性の顔を平手打ちする。その後すぐに、米証券大手メリルリンチ(Merrill Lynch)出身のドナルド・リーガン(Donald Regan)元財務長官が現れ、最高税率を半分にカットしてしまう。

 さらにこの映画では、恐怖の物語と人々を鼓舞する物語が交互に語られるが、最も怖い物語はもちろんサブプライムローンの崩壊だ。その結果、住宅の差し押さえが起こったが、ムーア監督によれば現在でも7.5秒に1戸の住宅が差し押さえられているという。

「これが、ウォール街が行った狂気のカジノだ。彼らが私たちの家に賭けることを、私たちが許してしまったのだ」とムーア監督は語る。

 さらにウォール街に降り立ったムーア監督は、犯罪現場で用いられる黄色のテープで銀行などを囲み、有名なメリルリンチの雄牛の銅像を見つけるとそのテープで包んでしまう。

 人々を鼓舞する物語としては、シカゴ(Chicago)の倒産した工場で解雇された従業員が座り込みを行い、債権者である米銀大手バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)や同JPモルガン・チェース(JP Morgan Chase)と解決に至った例などを描いている。
 
 そしてこの映画はムーア監督の熱弁で終わる。

「資本主義は悪であり、悪を規制することはできない。排除するだけだ。そしてすべての人々にためになり、かつ民主的であるものに置き換えなければならない」(c)AFP/Gina Doggett