【5月21日 AFP】アカデミー賞8冠に輝いた映画『スラムドッグ$ミリオネア(Slumdog Millionaire)』でヒロインの子ども時代を演じたルビーナ・アリ(Rubina Ali)ちゃん(9)の家が20日、当局により撤去された。

 アリちゃんの家は、ムンバイ(Mumbai)中心部のスラム街Gareeb Nagarで、線路近くに立てられた25軒の家のひとつだった。

 目撃者の話によれば、20日午前11時頃、約25人の武装した警官がやってきて撤去を始めたという。アリちゃんは外出していたが、父親のラフィク(Rafiq)さんが撤去中に負傷し、病院に運ばれた。

「市場に行っていたの。帰ってきたら、家が壊されてた。今夜はどこに寝ればいいのかしら。屋根がないのに」アリちゃんは、記者たちにこう語った。

 同じ映画で共演したアズルディン・モハメド・イスマイル(Azharuddin Mohammed Ismail)君(11)の同じ地区にある家も、先週、ムンバイ市当局の不法スラム一掃計画のもとで撤去されている。ムンバイでは、6月から9月までの雨期を前に、不法に建てられた家を撤去するのは、よくあることだという。

 ムンバイの約1800万人の住民のうち、半数以上がスラム街や不法に建てられた家に住んでいる。その多くが、大雨が降ればあふれ出す下水溝沿いに暮らしている。しかし、市当局は住宅不足を理由に、不法住宅の建設を禁止することはできないという。

 全国スラム居住者連合(National Slumdwellers Federation)のM・G・シェーカー(M.G. Shaker)氏は、「事前の通告なしに家を撤去されることが多い。彼らは行く場所がないので、同じ地区にまた家を建てる。何らかの代替施設が必要だ」と語る。

 イスマイル君の家族は家を建て直しているという。

 アリちゃんの家の撤去に携わった鉄道当局の担当者は、「これらの家は不法で、当局の敷地内に建てられていた」と説明した。しかしアリちゃんの義母は、「昔から建っている家で違法ではない。それでも撤去された」と語った。

 今回、家が撤去されたことで、「スラムドッグ」で一躍有名になった2人は現在の場所から立ち退かざるを得ない状況になる可能性がある。映画のヒットを受けて、市当局は2人の家族に住居の提供を約束している。

 そのほかにも、映画の制作チームは、2人が18歳になるまで支援する基金を設立。2人は現在、毎月奨学金を受け取り、学校に通っている。この制作チームは先月、スラム街の子どもたちを救済するため50万ポンド(約7400万円)を寄付した。(c)AFP/Shail Kumar Singh