【5月19日 AFP】(一部訂正)マンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)のスター選手だったエリック・カントナ(Eric Cantona)が、第62回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で新たな脚光を浴びている。カントナが出演し、英国のケン・ローチ(Ken Loach)監督がメガホンを取ったコメディー映画『Looking for Eric』が、パルム・ドール(Palme d'Or)有力候補の1つに挙がっているのだ。

 カントナは、手に負えない2人の義理の息子と自分の人生に疲れた郵便配達員の精神的な支えになる役を演じている。といっても、カントナが演じるのは自分自身。郵便配達員も同じエリックという名前で、カントナはその郵便配達員の前に「私は人間ではない、カントナだ!」と言いながら幻影のように登場する。

 郵便配達員の自信を取り戻そうと、カントナは次々とおもしろい発言をする。そして、1995年にファンにカンフー映画さながらのけりを入れたときの言葉が映画のフィナーレに登場する。「カモメが漁船のあとを付けるのは、イワシが海に投げ込まれると思うからだ」

 さらに、2時間の作品には、チームプレーに関するローチ監督のメッセージとして、サッカーの試合やファンがふんだんに描かれている。

 これまでにも多くの作品に出演したことのあるカントナは、映画の大ファン。ローチ監督の作品はほとんど見たことがありどれも好きだが、イタリアのピエル・パオロ・パゾリーニ(Pier Paolo Pasolini)監督のような、全く傾向の違う作品も好むという。
 
 さらに、作品の中でトランペットも披露しているカントナは、「演技は続けるよ。演技に対する情熱が無くなったら、他の事をやる。ジャズとかね」と語っていた。
 
 カントナは1997年に現役を引退。このとき、他チームからの誘いを断り、マンチェスター・ユナイテッドのファンから尊敬を集めた。同チームに関する多くの著作があるイバン・ポンティング(Ivan Ponting)氏は、「カントナは、制御できない自由な精神の持ち主で、同じ所に長居することのない気まぐれな渡り鳥だ」と表現している。(c)AFP/Claire Rosemberg