【5月18日 AFP】第62回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で先週末、アジアからの暗く暴力的な出品作が相次いで上映された。

■香港からは復しゅうに燃える父親を描いたジョニー・トー作品

 香港(Hong Kong)のジョニー・トー(Johnnie To)監督の『Vengeance(復しゅう)』は、コンペティション部門の出品作。フランスの往年のロック歌手ジョニー・アリディ(Johnny Hallyday、65)が、家族を殺され、復しゅうに燃える父親を演じる。

 上映会場周辺には、ジョニー・アリディを一目見ようと約1万人のファンが集まり、口々に「ジョニー」と叫んだ。「招待状を持ってる?ジョニーは、私の人生すべてなの」と尋ねるファンもいた。
 
 トー監督は今作で、大ファンであるサム・ペキンパー(Sam Peckinpah)監督の作風をまねたという。ペキンパー監督は、バイオレンス描写が有名で、代表作には『ワイルドバンチ(The Wild Bunch)』や『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯(Pat Garrett and Billy the Kid)』などがある。

■フィリピンからは堕落した警官を描いた問題作

 フィリピンからコンペティション部門に出品されたブリランテ・メンドーサ(Brillante Mendoza)監督作『Kinatay(虐殺)』も上映された。2年連続でカンヌにやって来たメンドーサ監督は今回、売春婦を殺害し、死体を切り刻む警官を描いた。

 アダルト映画を上映するマニラの映画館を舞台に貧困や苦悩を描いた昨年の『Serbis』に続き、メンドーサ監督は今回も、社会の現実を描きたかったという。幸せな結婚式で始まり、堕落した同僚たちと夜の街にくり出す新人警察官の1日が描かれているが、同僚は1人の売春婦を拷問、レイプの果てに殺害し、切り刻んだ死体をマニラのいたる所に捨ててしまう。

「これは、エンターテインメントではない。こういった話は現実に起こっている」と監督は記者会見で語った。

 そのほか、カルト的な人気を誇る韓国映画『グエムル-漢江の怪物-(The Host)』のポン・ジュノ(Bong Joon-Ho)監督の新作『マザー(Mother)』が、「ある視点(Un Certain Regard)」部門で上映された。(c)AFP/Claire Rosemberg