【2月17日 AFP】おいしい役へのパスポートか?それとも重苦しい悩みの始まりか?映画業界で最も栄誉あるアカデミー賞だが、過去を振り返ると、オスカー獲得が将来の成功を保証する鍵とはならないようだ。

 キューバ・グッディング・Jr(Cuba Gooding Jr.)からエイドリアン・ブロディ(Adrien Brody)まで、オスカーを獲得するも栄光の日々はつかの間で、人気作品にありつけないスターたちがハリウッド(Hollywood)には大勢いる。

 映画情報サイトHollywood.comの編集者ルー・ハリス(Lew Harris)氏は、「オスカーの獲得が将来の成功を保証するとは言えないと思う」と語る。

■グッディング・Jr、ブロディ、マリサ・トメイの場合

 グッディング・Jrが顕著な例だ。1997年に29歳にして『ザ・エージェント(Jerry Maguire)』でアカデミー賞助演男優賞を獲得するも、その後はヒット作に恵まれていない。『チャーリーと18人のキッズ in ブートキャンプ(Daddy Day Camp)』や『マッド・ファット・ワイフ(Norbit)』など酷評を受けたコメディーに出演し、その年の最低な映画や役者に贈られるゴールデン・ラズベリー賞(通称:ラジー賞、Golden Raspberry AwardsRazzies)にノミネートされたこともある。

 1993年に『いとこのビニー(My Cousin Vinny)』で助演女優賞を獲得したマリサ・トメイ(Marisa Tomei)は、今年『レスラー(The Wrestler)』で再びノミネートされているが、低迷した時期もあった。

 ハリス氏によれば、グッディング・Jrとトメイはタイプが違う。トメイは足場を固めることができなかっただけだが、グッディング・Jrは、オスカー以降良い作品に出ることができず、醜態をさらしてきたという。

 ハリス氏はさらに、若くしてオスカーを獲得することは、その人物のキャリアに思わぬ影響を与えることもあると語る。「その人物が若くて無名な時期にオスカーを取ってしまったら、その日から皆の視線にさらされる。準備もできていないのに、いきなりスポットライトを浴びることになる」

 エイドリアン・ブロディは、2003年に『戦場のピアニスト(The Pianist)』で主演男優賞を取るまで、主に小規模な作品や、主演が目立つのではなく出演者全員が同一の重要性を持つような作品に出演していた。オスカー獲得後も同様の作品に多く出演している。

■脚本をえり好み

 芸能情報紙ハリウッド・リポーター(Hollywood Reporter)の編集者によれば、オスカー獲得でオファーの数が増えると、その役者は自分が望む完ぺきな作品を選ぶようになるという。つまり、オスカー獲得につながるリスキーな役を選ばなくなるというのだ。

■オスカー獲得後に伸び悩むスターたち

 近年では、オスカーを獲得したあと、徐々に表舞台から遠ざかるスターが多い。2001年の『チョコレート(Monster's Ball)』で主演女優賞を取ったがその後が続かないハル・ベリー(Halle Berry)や、『モンスター(Monster)』で2003年の主演女優賞を取ったが、その後は地味な作品への出演が続くシャーリーズ・セロン(Charlize Theron)などもそうだ。

 レニー・ゼルウィガー(Renee Zellweger)は、『ブリジット・ジョーンズの日記(Bridget Jones' Diary)』や『シカゴ(Chicago)』などのヒット作で助演女優賞にノミネートされ、2003年の『コールド マウンテン(Cold Mountain)』でついにオスカーを獲得した。しかし、その後はノミネートされることもなく、高いレベルの演技を続けることがいかに難しいかを示している。

■質より金?

 ハリス氏によれば、オスカー獲得後は映画の質よりも出演料を重視するというスターたちもいるという。

「俳優たちはすぐにオスカーを金に換えようとし、長期的に見れば自分を傷つけるような役を選んでしまう。キャリアをキープしたいがために、悪いアドバイスを信用してしまう。オスカーを取ったことで、悪い選択はしないだろうと思ってしまうが、それが逆に悪い方向へ向かうという結果を生む」。(c)AFP/Tangi Quemener