【1月20日 AFP】実在したヒトラー暗殺計画を描いた映画『ワルキューレ(Valkyrie)』で、計画の首謀者を演じた米俳優トム・クルーズ(Tom Cruise)に、ドイツの批評家は厳しい評価を突きつけている。

 クルーズが演じたこの作品の主役は、ドイツ人将校クラウス・フォン・シュタウフェンベルク(Claus Schenk von Stauffenberg)。ヒトラーの命を狙い英雄となった将校が描かれるということや、制作にまつわるさまざまな物議で、『ワルキューレ』はドイツでこの冬一番の注目作になっている。しかし、当初からクルーズに対する期待は低かったものの、作品を見た批評家からは、わずかな期待も打ち砕かれたという声が上がっている。

「クルーズは、映画の中で薄っぺらく無表情な中心的存在になり、そのほかの出演者やスタッフは亡霊のように色あせている。これは、シュタウフェンベルク将校の眼帯のせいではない。共演者の演技は、無表情のクルーズの隣で奇怪に見える」ベルリン(Berlin)の日刊紙ターゲスシュピーゲル(Tagesspiegel)の批評家はこう酷評している。

 一方、シュタウフェンベルク将校の子孫は18日付けの独紙のインタビューで、クルーズは実際の将校に比べ、堅苦しくて小さすぎだと批評した。

 シュタウフェンベルク将校は旧プロイセン王国の貴族出身で、1944年7月20日、東プロイセン(現ポーランド)にあったナチスの総統大本営で実行されたヒトラー暗殺計画で、会議中のテーブルの下に爆弾入りのブリーフケースを置いた人物。しかし、ブリーフケースが動かされたため、オーク材のテーブルの頑丈な足に遮へいされ、ヒトラーはかすり傷を負っただけで暗殺を逃れた。シュタウフェンベルク将校ほか計画に加わった人物たちは逮捕され、銃殺刑に処された。(c)AFP/Deborah Cole