【10月27日 MODE PRESS】河瀨直美(Naomi Kawase)監督の最新作『七夜待』で主役・彩子を演じたのは、今年30歳を迎えた女優の長谷川京子(Kyoko Hasegawa)。テレビドラマやCMで見せる「理想の女性」像でなく、漠然とした不安を抱えひとりで異国タイに降り立つ30代女性の姿を豊かに演じきり、女優としての新たなステップを踏み出した。
 
■新たな演技への挑戦

 今回の撮影を「今後演技をしていく上で絶対に経験しないといけないことだった」ときっぱりと語る長谷川。「これまでのTVドラマや映画では、 決められた台詞や明確なキャラクターが事前に用意されていましたが、河瀨監督の現場に詳細を書いた台本は無く、おおまかな行動の指示があるだけでした。自分が彩子として感じ、言葉を発しないといけない。最初は声のトーンやしゃべり方ひとつにも戸惑いました」
 
 パズルのピースとして 決められた物語の中に納まるのでなく、自分の演技で物語のページを新しく書き込んでいくという経験は容易なものではなかった。その中で学んだのが、「明確にキャラクターを演じるのでなく、細かな感情のひだを演じること。そして、画面に映っただけで、人を納得させてしまうような、自分自身を押し通すパワー が必要性だということに改めて気付きました」

■全ては自分次第
 
 漠然とした不安を抱える彩子は、自分の姿でもあった。

「自分も30代を迎えるにあたり、漠然とした不安を20代後半に抱いていた。仕事も恋愛もある程度こなしてきたけれど、いざステップアップしようと思っても、情報が溢れすぎていてどこに向かえばいいのかが分からない。恵まれすぎていたことで逆に、自分自身を見失っていた感じがした」

そんな中、タイという異国で撮影に挑むことで、「自分の立ち居地が明確に見えた」と長谷川。

 「作品を通じて、全ては自分次第だとわかったんです。今起きていることは、良くも悪くも自分が起こしているんだと。ただ不満を抱いていても、何も変わらない。逆に自分が変わることで、周りの環境を変え、新たなステージに進むことができる」

 晴れやかな表情で「全ては自分次第です」と語った長谷川の姿が、タイの自然の中でゆっくりと心身を解きほぐされ、新たな自分に生まれ変わる主人公・彩子に重なって見えた。(c)MODE PRESS

◆11/1(土)より、シネマライズ、新宿武蔵野館他にて全国公開

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