【9月4日 AFP】残すところあと3日となった第65回ヴェネチア国際映画祭(Venice International Film Festival)で、コンペティション部門に出品された21作品の多くが期待はずれだという厳しい批評が相次いでいる。

 8月27日に迎えたオープニングでは、ジョエル・コーエン(Joel Coen)とイーサン・コーエン(Ethan Coen)の兄弟監督の作品『Burn After Reading』を上映。レッドカーペットには出演者のジョージ・クルーニー(George Clooney)とブラッド・ピット(Brad Pitt)らが登場し、開幕に花を添えた。しかし、英紙ガーディアン(Guardian)の映画評論家の言葉を借りれば、今年の出品作の多くは「砂糖の入っていないポリッジ(オートミールのお粥)」だという。

■各紙が辛口批判を掲載

 3日のコリエレ・デラ・セラ(Corriere della Sera)紙は、「ガッカリな作品が多すぎる。ハリウッドスターが出演している作品も少なく、劇場には観客も少なく、パーティーも少ない」と落胆を見せ、スタンパ(Stampa)紙は「今年は最悪。気に入ったのはコーエン兄弟の作品のみ」と憤る。レプブリカ(Repubblica)紙に至っては「まるでやつれ果てているようだ。金獅子(Golden Lion)賞もそのほかの各賞も、もう誰にとっても重要ではない。以前は、審査員の瞬きひとつに皆が注目していたのに」とのコメントを掲載している。

 特に「期待はずれだった」とされている作品は、フランスのバーベット・シュローダー(Barbet Schroeder)監督が日本を舞台に撮ったスリラー『Inju, the Beast in the Shadow』と、香港(Hong Kong)の監督が手掛けたブラジルを舞台にした男女三人のドラマ『Plastic City』だ。

 インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(International Herald Tribune)紙の批評家ロデリック・コンウェイ・モリス(Roderick Conway Morris)氏は、「『Inju, the Beast in the Shadow』は舞台となった土地の独自性を出そうとするあまり、ストーリー性が失われてしまった」と批判。米ハリウッド・リポーター(Hollywood Reporter)誌のレイ・ベネット(Ray Bennett)氏は『Plastic City』を「おばかなファンタジー」だと非難した。

■好評な日本勢

 こうした中、高い評価を受けている作品もある。北野武(Takeshi Kitano)監督作『アキレスと亀(Achilles and the Tortoise)』や宮崎駿(Hayao Miyazaki)監督作『崖の上のポニョ(Ponyo on the Cliff by the Sea)』、イタリアのMarco Bechis監督作『BirdWatchers』、エチオピアのHaile Gerima監督作『Teza』、米国のジョナサン・デミ(Jonathan Demme)監督作『Rachel Getting Married』などの作品だ。

■ヴェネチア国際映画祭の不安要素

 トロントでは今週、ローマでは来月に国際映画祭が開幕することもあり、ヴェネチア国際映画祭は映画界の注目を一点に集めることができない。さらに、水の都での高額な開催費や建物の老朽化がネックになっている。先週着工した新会場の建物は、総工費7500万ユーロ(約117億円)で2011年に完成の予定だ。

 今年はチケットの売れ行きも12%減で、会場周辺のホテルやレストランの売り上げも2007年に比べると80%程度だという。(c)AFP